可憐な花は黒魔導士に二度恋をする
しばし呆然とした後、リナリアはこれはむしろラッキーだと思うことにした。
猫の姿でハインツ様に近づけば、浮気の証拠をもっと手早く集められるかもしれないわ!
リナリアはバッグを茂みの中に押しやって隠すと、軽くなった体でタタッと走り出してハインツを追いかけたのだった。
ハインツが入っていった建物は各師団の控室があり、リナリアが父親に届け物をする時もたいていここに来るため、内部の構造はよく知っている。
だからリナリアはハインツの所属する師団の控室の場所を知っており、迷うことなく軽やかな足取りでその方向へ進んでいると前方にハインツの後ろ姿が見えた。
ドアを開けるハインツに追いついて一緒に中へ入る。
リナリアの父、カルスの率いる師団の雰囲気は明るく大らかで皆仲が良い。だから後輩が先輩に向かってポンポン軽口を叩くのも日常的で、この部屋はいつもガヤガヤと騒がしい。
「ハインツ、何だその猫」
同僚からそう言われて足元を見下ろしたハインツと、猫のリナリアの視線が絡む。
ハインツが険しい顔をしてリナリアを抱き上げ目線を同じ高さに合わせたため、リナリアは一瞬、自分が猫になっているのがバレたのかとヒヤっとしたがそれは杞憂だった。
「おまえ、ブサイクだな」
その呟きに大いにショックを受けたリナリアだ。
何せこれまで『可愛い』と言われることはあっても『ブサイク』と言われたことなんて一度たりともないのだから。
猫って普通「可愛い♡」って称賛される生き物なんじゃないの?
それともわたし、猫に変身したわけじゃなかったってこと?
いやいや、さっき同僚のあの方がはっきりと「その猫」っておっしゃっていたんだから、やっぱり猫よね。
すぐそばに鏡があることに気づいて目を凝らして見ると、そこには麗しいハインツに抱かれたぶち猫が映っていた。
不規則なぶち柄につぶれた鼻、猫とは思えないようなやぶ睨みの目に太短い尻尾。
ブ、ブサイクすぎるんですけどっ!!
驚きのあまり全身の毛が逆立ってしまう。
猫の姿でハインツ様に近づけば、浮気の証拠をもっと手早く集められるかもしれないわ!
リナリアはバッグを茂みの中に押しやって隠すと、軽くなった体でタタッと走り出してハインツを追いかけたのだった。
ハインツが入っていった建物は各師団の控室があり、リナリアが父親に届け物をする時もたいていここに来るため、内部の構造はよく知っている。
だからリナリアはハインツの所属する師団の控室の場所を知っており、迷うことなく軽やかな足取りでその方向へ進んでいると前方にハインツの後ろ姿が見えた。
ドアを開けるハインツに追いついて一緒に中へ入る。
リナリアの父、カルスの率いる師団の雰囲気は明るく大らかで皆仲が良い。だから後輩が先輩に向かってポンポン軽口を叩くのも日常的で、この部屋はいつもガヤガヤと騒がしい。
「ハインツ、何だその猫」
同僚からそう言われて足元を見下ろしたハインツと、猫のリナリアの視線が絡む。
ハインツが険しい顔をしてリナリアを抱き上げ目線を同じ高さに合わせたため、リナリアは一瞬、自分が猫になっているのがバレたのかとヒヤっとしたがそれは杞憂だった。
「おまえ、ブサイクだな」
その呟きに大いにショックを受けたリナリアだ。
何せこれまで『可愛い』と言われることはあっても『ブサイク』と言われたことなんて一度たりともないのだから。
猫って普通「可愛い♡」って称賛される生き物なんじゃないの?
それともわたし、猫に変身したわけじゃなかったってこと?
いやいや、さっき同僚のあの方がはっきりと「その猫」っておっしゃっていたんだから、やっぱり猫よね。
すぐそばに鏡があることに気づいて目を凝らして見ると、そこには麗しいハインツに抱かれたぶち猫が映っていた。
不規則なぶち柄につぶれた鼻、猫とは思えないようなやぶ睨みの目に太短い尻尾。
ブ、ブサイクすぎるんですけどっ!!
驚きのあまり全身の毛が逆立ってしまう。