可憐な花は黒魔導士に二度恋をする
「そのブサ猫、ハインツ先輩にブサイクって言われて怒ってるんじゃないですか?」
 その声に聞き覚えがあって振り返ると、赤縁のローブを着た華奢な魔導士がこちらを見て笑っていた。

 この人よ!
 この人がハインツ様の浮気相手よ!
 でもおかしいわね、この人どちらかというと男に見えるけど。

 リナリアが首を傾げながら相手を凝視していると「うわあ、ますますブサイクだなあ。こういうのブサカワって言うんですよ、知ってました?ハインツ先輩」と笑いながら手を伸ばし、リナリアの体はハインツから浮気相手の方へと移る。

 胸にしっかりと抱かれて、胸が硬くてぺったんこなのを確認し、この柔らかみのない体つきは男に違いないと確信するリナリアだった。

 そういえば、まだ声変わりもしていない少年が入団してハインツ様が指導しているってお父様が言っていたような気がする……。
 え、じゃあ、あれは浮気じゃなくて魔法の特訓をしていたってこと!?

 通常、義務教育で基礎を終えてから魔導師見習いとして就職するのが正規ルートだが、魔力が強く将来有望な人材の囲い込みを図るために飛び級制度というものがあり、十代前半から魔導師として働き始める者もいる。
 かつてはハインツもその一人だった。

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