可憐な花は黒魔導士に二度恋をする
 22歳のわたしが父の第2師団に所属する白魔導士だったという事実を聞かされた時、わたしはとても驚いた。

 確かに白魔導士になることを夢見ていた。
 ただ、魔物の討伐を専業とする第2師団は危険な上に遠征も多く、命と隣り合わせの過酷なハードワークを強いられる部署なのだ。

 父だって、滅多に自宅に帰って来ない。
 それを知っていたわたしは、「魔導士っていったらやっぱ魔物の討伐部隊に入ってかっこよくやっつけたいよな」なんて言っているアホな同級生どもを尻目に、命の危険もハードワークもない治療を専業とする第4師団所属の白魔導士になりたいとずっと思っていたのだ。

 第4師団は別名「聖女隊」とも呼ばれていて、怪我をした魔導士や騎士の治療にあたるため、とても感謝されるし、とてもモテる。
 そして治療を通じて知り合ったかっこいい男性に見初められて結婚に至るケースが多い。

 白魔導士の中には男性ももちろんいる。
 しかし彼らは王都の護衛にあたる第1師団か魔物討伐に帯同する第2師団を志望する傾向があるため、第4師団は女の園だ。

 母もかつてはこの第4師団に所属しており、黒魔導士である父に見初められて結婚したという典型的なパターンで、わたしもそうなりたいと憧れていたはずだったのに…。
 
 毛嫌いしていたはずの第2師団に所属して、おまけに危険なミッションに参加した挙句、まさか魔物にとり憑かれるとは、4年間でわたしの人生に何が起きていたんだろうか。
 
 
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