可憐な花は黒魔導士に二度恋をする
 自宅のわたしの部屋には、袖と前身ごろが焼け焦げたようになっているボロボロのローブが掛けられていた。
 ローブを縁取る刺繍糸は赤色で、猫のモチーフがあしらわれている。

 この国の魔導士たちの階級はローブの縁取りの色を見れば一目でわかるようになっており、上から順番に金・銀・紫・赤・緑、そして縁なしが一番下っ端だ。
 ローブの縁取りの模様は、家紋を入れたり本人の最も得意とする魔法のモチーフを入れたり、おまじないの呪文や好きなものを盛り込んだりと自由にリクエストすることができる。
 
 ちなみにわたしは、猫を飼ったこともなければ別段猫好きというわけでもない。
 しかし4年後のわたしは、猫好きに変貌しているということなのだろうか。

 自分のことなのにわからないことだらけだ。

 ただ、4年間で赤ランクまで成長していたということは、わたしはなかなか有能な白魔導士だったのかもしれない!
 未来のことなのに過去形。
 なんだかもう、よくわからない。

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