可憐な花は黒魔導士に二度恋をする
 今後自分がどうなるのかわからないが、とりあえず今度こそ?第4師団を志望してみよう!
 「聖女様♡」と呼ばれてみたい!
 
 そう思って用紙の第一志望の欄に『第4師団の白魔導士』と記入したところで、後ろから伸びてきた長い指にひょいっと取り上げられてしまった。

 振り向かなくったって誰だかわかる。
 金縁のローブにさらりとした黒い長髪。

「もうっ、ハインツ先生!」

 進路希望調査票をちらりと見た彼は、それをぐしゃっと握りつぶした。
「残念だが、きみは卒業後、私の助手になることが決定しているから、この紙は不要だ」

 そ、そんなあっ!


 ふと気づくと、最後列に座っていたわたしとハインツ先生のやり取りを全員が振り返って見ていた。

「もしかしてこれに『ハインツ先生の研究室』って書けば助手になれんのか?」
「ダメ元で書いてみようかしら!」

 そんなヒソヒソ声のやり取りが聞こえて、いたたまれなくなって席を立つとハインツ先生のローブの袖を引っ張って講堂を出た。
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