原田くんの赤信号
「なあ瑠美、二月十四日ってひま?」
瞬く間に終わった冬休みを名残り惜しみながら、高校の授業も再開した三学期最初の一限目の予鈴前。とことこと、わたしの席まで来た原田くんは言った。
ぽかんと原田くんを見上げると、彼はもう一度、同じ内容を口にする。
「なあなあ瑠美、二月十四日ひましてない?」
今日はまだ、三学期が始まったばかりの一月初旬。だからわたしは、それをそのまま伝えることにした。
「二月?今日はまだ、一月六日だよ?」
「うん、そうだよ。だからさ、まだ予定入ってないでしょ?俺と遊ぼうよ」
「えー、やだ」
「おいっ。断るの早くない?」
わたしの前の席に着席していた生徒は、デートの誘いにも似たこの光景に、他の席でドラマの話をする女子たちの輪に混ざった。
それを確認した原田くんは、彼女が座っていた席へ勝手に着く。
「なんでだよ瑠美。遊ぼうよ」
「だから、いやだってばあ」
「いやとか言うな、傷つくじゃんっ」
「だって原田くん、その日がなんの日か、知ってるでしょ?」
「あー、うん。それは知ってるけど……」
「バレンタインデーにわざわざ約束してまで遊ぶのは、カップルだけだよ」
「そうかあ?」と原田くんは頭を掻く。
「そうだよ」とわたしは教室前方へと目を向けた。
福井くんの視線が、どうかこちらを向いていませんようにと願いながら。
キンコンカンと予鈴が鳴り、始業チャイムまであと少し。男友だちとの会話に夢中になっている福井くんに胸を撫で下ろしたわたしは、原田くんへ視線を戻し、こう言った。
「ねえ原田くん。もしチョコが欲しいなら、他をあたってくれる?」
するとその瞬間、原田くんの目が少しだけ広がった気がした。
「は?チョコ?」
「だって、どうせチョコが欲しいんでしょ?だからわたしを誘ってるんじゃないの?」
「いや、ちがうし」
「でも残念、わたしは好きな人にしかあげないよ」
「だからちがうって。べつに、そういうわけじゃない」
「……あっそ」
始業チャイムが鳴り、そこで話は終わった。
瞬く間に終わった冬休みを名残り惜しみながら、高校の授業も再開した三学期最初の一限目の予鈴前。とことこと、わたしの席まで来た原田くんは言った。
ぽかんと原田くんを見上げると、彼はもう一度、同じ内容を口にする。
「なあなあ瑠美、二月十四日ひましてない?」
今日はまだ、三学期が始まったばかりの一月初旬。だからわたしは、それをそのまま伝えることにした。
「二月?今日はまだ、一月六日だよ?」
「うん、そうだよ。だからさ、まだ予定入ってないでしょ?俺と遊ぼうよ」
「えー、やだ」
「おいっ。断るの早くない?」
わたしの前の席に着席していた生徒は、デートの誘いにも似たこの光景に、他の席でドラマの話をする女子たちの輪に混ざった。
それを確認した原田くんは、彼女が座っていた席へ勝手に着く。
「なんでだよ瑠美。遊ぼうよ」
「だから、いやだってばあ」
「いやとか言うな、傷つくじゃんっ」
「だって原田くん、その日がなんの日か、知ってるでしょ?」
「あー、うん。それは知ってるけど……」
「バレンタインデーにわざわざ約束してまで遊ぶのは、カップルだけだよ」
「そうかあ?」と原田くんは頭を掻く。
「そうだよ」とわたしは教室前方へと目を向けた。
福井くんの視線が、どうかこちらを向いていませんようにと願いながら。
キンコンカンと予鈴が鳴り、始業チャイムまであと少し。男友だちとの会話に夢中になっている福井くんに胸を撫で下ろしたわたしは、原田くんへ視線を戻し、こう言った。
「ねえ原田くん。もしチョコが欲しいなら、他をあたってくれる?」
するとその瞬間、原田くんの目が少しだけ広がった気がした。
「は?チョコ?」
「だって、どうせチョコが欲しいんでしょ?だからわたしを誘ってるんじゃないの?」
「いや、ちがうし」
「でも残念、わたしは好きな人にしかあげないよ」
「だからちがうって。べつに、そういうわけじゃない」
「……あっそ」
始業チャイムが鳴り、そこで話は終わった。