原田くんの赤信号
ドクドクドク。
胸元に引き寄せられたわたしの耳に届く、原田くんの鼓動。
ドクドクドク、と。
わたしを好きではないのに、どうしてこんなにも速いのだろう。
「なあ……」
原田くんの声は、少し上から降ってきた。
「どうやったら俺のこと、好きになってくれる……?」
切ない声。やるせなさそうな声。
わたしはふるふると、小刻みに首を横に振るので精一杯。でも不思議と、この場所から今すぐ逃れたいとは思わなかった。
さっきまでとは違う沈黙が、ふたりの間に流れていく。
「……ねえ、瑠美」
普段から低い原田くんの声は、近くで聞けばより低く。
「ねえ、瑠美……聞いてる?」
普段は男友だちに紛れて、そう大きくは見えない彼の体も、すごく大きく感じた。
「瑠美……」
原田くんはれっきとした、男の人なんだ。
頭の中、ひとりごとばかりを呟いていたわたしは、原田くんから名前を呼ばれていることに気が付くのが遅くなってしまった。
「なあ、瑠美ってばっ」
「な、なにっ」
「キスしてみる?」
そしてようやく気付いたその時に投げかけられたのは、突拍子もない問いだった。
俯いていた顔を、素早く起こす。
「ちょ、え!原田くん!?」
慌てふためくわたしの前、原田くんの顔は、目を瞑りながらやって来た。
胸元に引き寄せられたわたしの耳に届く、原田くんの鼓動。
ドクドクドク、と。
わたしを好きではないのに、どうしてこんなにも速いのだろう。
「なあ……」
原田くんの声は、少し上から降ってきた。
「どうやったら俺のこと、好きになってくれる……?」
切ない声。やるせなさそうな声。
わたしはふるふると、小刻みに首を横に振るので精一杯。でも不思議と、この場所から今すぐ逃れたいとは思わなかった。
さっきまでとは違う沈黙が、ふたりの間に流れていく。
「……ねえ、瑠美」
普段から低い原田くんの声は、近くで聞けばより低く。
「ねえ、瑠美……聞いてる?」
普段は男友だちに紛れて、そう大きくは見えない彼の体も、すごく大きく感じた。
「瑠美……」
原田くんはれっきとした、男の人なんだ。
頭の中、ひとりごとばかりを呟いていたわたしは、原田くんから名前を呼ばれていることに気が付くのが遅くなってしまった。
「なあ、瑠美ってばっ」
「な、なにっ」
「キスしてみる?」
そしてようやく気付いたその時に投げかけられたのは、突拍子もない問いだった。
俯いていた顔を、素早く起こす。
「ちょ、え!原田くん!?」
慌てふためくわたしの前、原田くんの顔は、目を瞑りながらやって来た。