原田くんの赤信号
「なんだ小学生か!ごめん、わたしなに言ってるんだろうっ。気にしないで!」
「どうして俺の妹が中学生だなんて思ったの?」

 が、しかし。どうにも上手くおさめられない。

「ええっと、なんとなくっていうかっ」
「なんとなく?」
「あ、勘だ、勘!勘でそう思ったの!」
「ええ?」

 ぽかんとする福井くんの隣、原田くんの機嫌がななめ方向に曲がっていくのが、その疑念たっぷりの瞳から見てとれる。

 しどろもどろするだけのわたしに、福井くんは最後、笑いながらこう言った。

「瑠美のそういうとこ、面白くて好きだよ」

 ズキュン。
 その言葉に射抜かれたわたしは発熱、冬なのにもかかわらず、溶けそうになる。


 学校へと着き、スライム状態になった体をどうにか正常へ戻すと、まだシャキッとしない頭でこんなことを思う。

 やっぱりわたしは福井くんが好きだ。この強い想い、絶対に伝えたい。
 二月十四日、バレンタインデー。チョコレートを渡すだけではなくて、わたしは彼に告白をする。

 今週末にでも美希ちゃんを誘って、ラッピングを選びに行こう。チョコレートの材料も買わないといけないから、色々な店が揃っているショッピングモールがいいかな。

 なんてそんなことを考えながら過ごした午前中。しかしそんな浮かれ気分は、昼休みに睨みつけてくる原田くんによって、穴の空いた風船の如く萎んでいった。

「瑠美、ちょっと来て」
「な、なんで」
「いいから」
「どこに」
「東階段」
「え〜」

 人気(ひとけ)の少ない東側の階段といったらもうアレだ、あの話だ。

「やだぁ」
「来いってばっ」

 原田くんは渋るわたしの腕を掴み、容赦なく掻っさらった。
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