原田くんの赤信号
 行きはショッピングモールで待ち合わせたけれど、帰りはその場で手を振るわけにもいかずに、原田くんと同じ電車に乗車した。

 冬の夜は早い。家の最寄り駅に着く頃には、わたしたちの町はもう、夕焼け色に染まっていた。

 改札から出たあたりで手を繋ぐのはやめようと思い、コートのポケットに両手を隠してみたけれど、原田くんは「ん」と言って自身の手を差し出してくる。

「もう繋がないよ」
「まだ繋ごうよ」
「繋がない」
「なんでだよ」

 何度も断るわたしにしびれを切らせた原田くんは、「じゃあ勝手にお邪魔する」と、わたしのポケットにその手を侵入させてきた。

「つめたっ!」

 しばらく冷気にさらされていた原田くんの手は、わたしのものよりうんと冷えていた。
 ポケットの中。わたしの手をぎゅっと握って彼は言う。

「瑠美の手、あったかいなあー」
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