原田くんの赤信号
「なあ瑠美、好きな奴は福井じゃなくてさ、石森とかはどお?」
わたしになど興味はないくせに、わたしが福井くんを好きなことは嫌らしい原田くん。
階段を上がるわたしの背中を、タタタと追いかけて来て、後ろからクラスメイトのひとりをわたしに薦めてきた。
前を向いたまま、わたしは言う。
「石森くん?わたし、石森くんとはそんなに喋ったことないよ」
トントン タタタ。
原田くんはすぐにわたしのすぐ後ろまで追いついた。
「じゃああれだ、潤とかでいいじゃん」
「潤くんはモテすぎ、雲の上の存在でーす」
「じゃあえーっと、ナベちゃんはどう?」
「ナベちゃんって渡辺くんのこと?渡辺くんは、彼女もちじゃん」
「ああ、そっか。それじゃあんーっとねえ……」
「ちょっと、原田くんっ」
眉間に皺を寄せたわたしがふと歩みを止めると、原田くんも二段下で足を止めた。彼はまた、真剣な眼差し。
「石森くんも潤くんも、渡辺くんだって、わたしは好きにならないから」
「それなら、誰がいいんだよ」
「誰がいいかなんて、それはもう知ってるでしょっ。どこから仕入れたのかわからないけど、原田くんはわたしの好きな人の名前、知ってるんだから」
「うん。福井な」
「そ、そう」
「でも俺は、福井以外をお薦めしたい」
「はあ?っていうか原田くんさあ、最近少し変だよっ。どうしてそんなに、わたしにかまうの?わたしの好きな人はわたしが決めるし、そこに原田くんのお薦めは関係ないっ。わたしは高校に入った時からずっと、心に決めた好きな人がいるのっ」
そう。入学式のあの日から、わたしの心の真ん中にはずっとずっと、福井くんがいる。
原田くんは「うーん」と腕を組んで、悩む仕草。ぶつぶつとわたしに聞こえないような声で何かを呟いて、そして最後にこう言った。
「福井なんか、やめとけよ」
好きな人の苗字に『なんか』をつけた原田くんの頭を、わたしはトンカチでも使って叩いてやりたかった。
わたしになど興味はないくせに、わたしが福井くんを好きなことは嫌らしい原田くん。
階段を上がるわたしの背中を、タタタと追いかけて来て、後ろからクラスメイトのひとりをわたしに薦めてきた。
前を向いたまま、わたしは言う。
「石森くん?わたし、石森くんとはそんなに喋ったことないよ」
トントン タタタ。
原田くんはすぐにわたしのすぐ後ろまで追いついた。
「じゃああれだ、潤とかでいいじゃん」
「潤くんはモテすぎ、雲の上の存在でーす」
「じゃあえーっと、ナベちゃんはどう?」
「ナベちゃんって渡辺くんのこと?渡辺くんは、彼女もちじゃん」
「ああ、そっか。それじゃあんーっとねえ……」
「ちょっと、原田くんっ」
眉間に皺を寄せたわたしがふと歩みを止めると、原田くんも二段下で足を止めた。彼はまた、真剣な眼差し。
「石森くんも潤くんも、渡辺くんだって、わたしは好きにならないから」
「それなら、誰がいいんだよ」
「誰がいいかなんて、それはもう知ってるでしょっ。どこから仕入れたのかわからないけど、原田くんはわたしの好きな人の名前、知ってるんだから」
「うん。福井な」
「そ、そう」
「でも俺は、福井以外をお薦めしたい」
「はあ?っていうか原田くんさあ、最近少し変だよっ。どうしてそんなに、わたしにかまうの?わたしの好きな人はわたしが決めるし、そこに原田くんのお薦めは関係ないっ。わたしは高校に入った時からずっと、心に決めた好きな人がいるのっ」
そう。入学式のあの日から、わたしの心の真ん中にはずっとずっと、福井くんがいる。
原田くんは「うーん」と腕を組んで、悩む仕草。ぶつぶつとわたしに聞こえないような声で何かを呟いて、そして最後にこう言った。
「福井なんか、やめとけよ」
好きな人の苗字に『なんか』をつけた原田くんの頭を、わたしはトンカチでも使って叩いてやりたかった。