犬猿☆ラブコンフリクト
課題を提出し、しばらくの間教室で過ごしていると、ロングホームルームの終了のチャイムが鳴り響いた。
それと同時に帰り支度をして、各々部活や帰宅のために教室を出ていく。
私は特に部活には入っていないから、帰り支度を整えようと机の脇に掛けたカバンを取ろうとした。
その時、頭になにかがぶつかった。
「痛っ・・・!?」
頭を抑えて後ろを振り返ると、二海と大きなスポーツバックが目に入った。
「ちょっと、今頭叩いたでしょ!?」
「あ?叩いてねぇけど。・・・あ、荷物がぶつかっちまったか?悪い」
──驚いた。
あの二海が素直に謝るなんて・・・天変地異が起こる前触れか?
「数少ないミジンコ並の脳細胞にダメージ与えちまった」
──前言撤回、全然そんなこと無かった。
「荷物の大きさも考えないで狭いところ通ろうとするなんて、ちょっと考えればぶつかるに決まってんでしょ?この単細胞バカ!」
座ったままで二海に見下ろされるのも癪に障る。
ガタッと音を立てて立ち上がり、二海に向かい合いながら言い返す。
「ミジンコ並の頭脳のやつに単細胞バカとかいわれたくねーし。つーか、ミジンコだって単細胞じゃねぇかよ。まさか自分のこと馬鹿にした?」
「ふふん、残念でした〜。ミジンコは多細胞生物ですぅ〜。ミジンコ並の頭脳の持ち主よりもバカとか救いようないんじゃないの〜?」
以前、化学の先生に訂正されたから間違いない。
私は胸を張り、ドヤ顔で二海の間違いを訂正する。
「・・・・・・」
「なになに?悔しくて声も──イタタタタ!」
黙り込んだ二海は、いきなり私の頬をつまんで引っ張り始める。
「はっ、すっごい馬鹿面」
「っ・・・っもう!!何すんのさ!!」
二海の腕を振り払い、ヒリヒリと痛む頬をさする。
こいつ、絶対本気で引っ張ったでしょ・・・めっちゃヒリヒリする。
「おーい、二海ー。部活行こうぜ〜」
恨めしそうに二海を睨みつけていると、教室の入口から顔を覗かせる男子が二海に声をかける。
こいつ、部活入ってるんだ・・・通りで荷物が多いわけだ。
「あぁ、今行く!・・・じゃあな、あほ面」
それだけ言い残すと二海はスポーツバックから何かを取り出し、私の頬に当てる。
「冷たっ・・・!?」
不意に冷たいものを当てられ、ビックリしてその冷たいものを手に取る。
これは・・・保冷剤?
しかも、使い捨てのものだ。
「ねぇ、二海──」
声をかけようとしたが、保冷剤から視線を上げた時にはもう既に二海は教室から出ていく所だった。
「・・・なんなの、あいつ・・・」
ひんやりと冷たい保冷剤をつねられたところに当てながら考え込む。
本当、訳わかんない。