絶対通報システム
家に帰っても、気分は晴れないままだった。
イケメンで有名な横島くんに好意を持ってもらえるなんて、幸せなことなのに。
それに、めぐみちゃんが横島くんを好く思っているのってアイドルを好きみたいなものじゃないの? イケメンならすぐにキャーキャー言うし、ミーハーなところがある子だから。友達なら、一緒に喜んでくれてもいいのに。
ひとりで考え続けても、どうしたらいいのかわからない。
モヤモヤした気持ちのままソファーに寝転んでいると、電話が鳴った。
――もしかしたら、めぐみちゃんかもしれない。
憂鬱な気持ちのまま電話に出ると、予想もしていなかった声が聞こえてきた。
「もしもし、久代さんのお宅ですか? 俺、同級生の横島っていうんですけど……」
「横島くん!?」
「久代さん? 良かった。家族の人が出たらどうしようって思ってた」
そういえば「今度4人でどっか遊びに行こう」って話になったとき、家の電話番号を教えていたんだ。でも、急にどうしたんだろう。
「あのさ……今日の昼、変な雰囲気にしちゃってごめん。気にしてたら悪いなって気になっちゃって、電話したんだ」
「そんな、全然気にしてないよ! 秋成くんのいつもの冗談だよね」
そうだよね。めぐみちゃんの言う通り、きっと勘違いだ。私は意味もなく毛先をくるくると指に巻き付けて、気持ちを落ち着かせようとしていた。
「――冗談じゃない。俺、久代さんのこと気になってるから。その、嘘とか冗談だとか思われたくなくって」
…………ドクンッ。
世界が一瞬止まって、自分の心臓の音と一緒にまだ動き出した。
受話器を持っている指先が熱を持ち、じわりと汗をかきはじめる。
「そ、それって……」
「とにかく、それが言いたかったから。じゃあ、また学校で!」
こちらの返事も聞かず、横島くんは電話を切ってしまった。
電話は切れたのに、胸の鼓動はどんどんと加速していく。
これってもしかして、私も――。
中庭で私のこと見つめる横島くん。
体育祭で輝いていた横島くん。
色々な彼の姿が浮かんでくる。
うわぁ。どうしよう。意味もなく廊下をウロウロしていると、レポートデバイスの通知音がなった。
なんだろう? 画面を確認すると、そこには信じられない文字が浮かんでいた。
【あなたは通報されました。誹謗中傷や嫌がらせをした覚えはありませんか?】
……なんで私が通報されるの? 私、なにかした? ていうか、通報されただけでも通知が来るんだ。
色々な感情が頭のなかをぐるぐるとまわる。落ち着いて。ひとつひとつ考えていこう。
まず、今日私は誰かに通報されるようなことをしたか思い出してみる。うん、今日は別になにもなかった。横島くんのこと以外は。そうなると、私に通報した人は自然と絞られてくる。
――めぐみちゃんしか、いないじゃん。
自分がかっこいいと思ってる人が私のことを気に入ってるからって、こんなことする? さすがに腹が立ってきて、下唇をぎゅっと噛みしめた。
もう一度レポートデバイスの画面を見る。よく見たら[はい][いいえ] と回答を選択する画面になっていた。私は迷いなく[いいえ]をタップする。
【ご回答ありがとうございました。通報内容はシステム管理局によって審査されます】
これってなにもしなくても通報できるものなんだ。もしかして、信用ポイント下がってないよね!? 不安になって確認したが、私の信用ポイントは53ポイントのままだった。
こんな嘘で通報されて、もしポイントが下がって進学に影響したら……最悪。
「もう、ムカつくっ」
ソファーのクッションをおもいきり叩いても、イライラした気持ちは消えなかった。
イケメンで有名な横島くんに好意を持ってもらえるなんて、幸せなことなのに。
それに、めぐみちゃんが横島くんを好く思っているのってアイドルを好きみたいなものじゃないの? イケメンならすぐにキャーキャー言うし、ミーハーなところがある子だから。友達なら、一緒に喜んでくれてもいいのに。
ひとりで考え続けても、どうしたらいいのかわからない。
モヤモヤした気持ちのままソファーに寝転んでいると、電話が鳴った。
――もしかしたら、めぐみちゃんかもしれない。
憂鬱な気持ちのまま電話に出ると、予想もしていなかった声が聞こえてきた。
「もしもし、久代さんのお宅ですか? 俺、同級生の横島っていうんですけど……」
「横島くん!?」
「久代さん? 良かった。家族の人が出たらどうしようって思ってた」
そういえば「今度4人でどっか遊びに行こう」って話になったとき、家の電話番号を教えていたんだ。でも、急にどうしたんだろう。
「あのさ……今日の昼、変な雰囲気にしちゃってごめん。気にしてたら悪いなって気になっちゃって、電話したんだ」
「そんな、全然気にしてないよ! 秋成くんのいつもの冗談だよね」
そうだよね。めぐみちゃんの言う通り、きっと勘違いだ。私は意味もなく毛先をくるくると指に巻き付けて、気持ちを落ち着かせようとしていた。
「――冗談じゃない。俺、久代さんのこと気になってるから。その、嘘とか冗談だとか思われたくなくって」
…………ドクンッ。
世界が一瞬止まって、自分の心臓の音と一緒にまだ動き出した。
受話器を持っている指先が熱を持ち、じわりと汗をかきはじめる。
「そ、それって……」
「とにかく、それが言いたかったから。じゃあ、また学校で!」
こちらの返事も聞かず、横島くんは電話を切ってしまった。
電話は切れたのに、胸の鼓動はどんどんと加速していく。
これってもしかして、私も――。
中庭で私のこと見つめる横島くん。
体育祭で輝いていた横島くん。
色々な彼の姿が浮かんでくる。
うわぁ。どうしよう。意味もなく廊下をウロウロしていると、レポートデバイスの通知音がなった。
なんだろう? 画面を確認すると、そこには信じられない文字が浮かんでいた。
【あなたは通報されました。誹謗中傷や嫌がらせをした覚えはありませんか?】
……なんで私が通報されるの? 私、なにかした? ていうか、通報されただけでも通知が来るんだ。
色々な感情が頭のなかをぐるぐるとまわる。落ち着いて。ひとつひとつ考えていこう。
まず、今日私は誰かに通報されるようなことをしたか思い出してみる。うん、今日は別になにもなかった。横島くんのこと以外は。そうなると、私に通報した人は自然と絞られてくる。
――めぐみちゃんしか、いないじゃん。
自分がかっこいいと思ってる人が私のことを気に入ってるからって、こんなことする? さすがに腹が立ってきて、下唇をぎゅっと噛みしめた。
もう一度レポートデバイスの画面を見る。よく見たら[はい][いいえ] と回答を選択する画面になっていた。私は迷いなく[いいえ]をタップする。
【ご回答ありがとうございました。通報内容はシステム管理局によって審査されます】
これってなにもしなくても通報できるものなんだ。もしかして、信用ポイント下がってないよね!? 不安になって確認したが、私の信用ポイントは53ポイントのままだった。
こんな嘘で通報されて、もしポイントが下がって進学に影響したら……最悪。
「もう、ムカつくっ」
ソファーのクッションをおもいきり叩いても、イライラした気持ちは消えなかった。