絶対通報システム
 お母さんに事の顛末を話すと、私と一緒に泣いてくれた。

 仕事から帰ってきたお父さんにも話したけど、特に責められることもなく「気にするな」とだけ言ってくれた。

 ――三人で話しても、解決策も見つからなかった。これ以上信用ポイントが下がったらどうなるんだろう。酒井くんの家みたいに、ここを出ていかなければならなくなる? ううん……出ていっただけならまだマシなのかもしれない。だって、私たちは酒井くんの家がどうなったか知らない。


 “どうなるかわからない”ことが、こんなにも怖いだなんて想像もしなかった。


 夜も更け、私はベッドで横になっていた。何度も寝返りをうつ。耳を澄ますと、まだお母さんとお父さんが話し合っていることが聞こえてくる。

 いや、この声の大きさは言い合っている。喧嘩をしているんだ。きっと、今日の私のことで。

 天井に手を翳してみる。右手小指のリングデバイスが不気味に光っていた。こんなものなけれ良かったのに。私どころか、私の家族まで巻き込んで……。

 めぐみちゃんの満面の笑顔が浮かぶ。お母さんを泣かせてしまった。お父さんを困らせてしまった。そのことが少しずつ実感に変わっていく。悲しさと同時に、身を焦がすような怒りが湧いてきた。

「……許さない」

 熱い涙が零れる。私を貶めためぐみちゃん。それに騙されているみんなも、先生も。こんなシステムに踊らされているなにもかも。

「復讐してやる」


 こんな夜更けなのに、どこかでカラスが鳴いていた。
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