絶対通報システム
「久代さんも、レポートデバイスの通報をタップしてみて」
真澄くんの言う通りに、私はレポートデバイスを操作する。
「なにを通報するのか選択肢が出るときに『公共施設・道路の不備』を選んで」
すると、今までみたことのない文字が画面に表示された。
【通報の根拠となる証拠を添付できます。証拠はカメラアプリによる写真・動画のほかに、音声録音機能が提出できます。証拠が信用に足るものだった場合、信用ポイントの数値に関わらず、適切に報告が受理されます】
黒い丸がくるくると回る。
――カメラアプリが利用できます。
――リングデバイスの音声機能が利用できます。
「オーケー。それでホーム画面に戻ったら、ふたつのアプリが出ているはず」
言われた通りに戻ると、たしかに機能がふたつ増えていた。
「こんな機能が隠されていたなんて……」
カメラアプリを開くと、レポートデバイス越しに私のお弁当が見えた。
レポートデバイスの背面を見ると、どうやら上部にカメラが付いているらしいが、一目みただけじゃわからないぐらいに小さかった。
「帰り道にコンクリートが割れているところがあって気になってたんだよ。試しに通報してみようとしたときに、この機能があることに気づいてね。たぶん、通報の信用度が高まると思う。現に僕は酒井から殴られた痕や、教科書にされた悪戯の写真を全部添付したら、五分もしないうちに受理されたよ」
……それなら、証拠さえ集めることができたら通報することができる。
私と同じように、あの子達の信用ポイントだって低くすることができるかもしれない。
公共物の通報なんてする子も滅多にいないだろうから、この機能が知れ渡っていない今なら、うまく使えるかもしれない。
暗闇のなかで、一筋の光が差したような気分だった。
「真澄くんっていい人だったんだね。ごめんね、私色々と誤解していたみたい」
「いいよ。僕は恩を返したいだけ。優しい久代さんに、辛い思いをしてほしくないんだ」
真澄くん、ごめん。あなたが思うほど私はいい人間なんかじゃない。優しくもない。
教えてもらったこの機能で、あの子たちに復讐しようと考えているんだから。
「平和な教室に、なればいいよね」
生ぬるい風が土埃を巻き上げていた。
今まで、私は人間関係も学校生活も、うまくできていると思っていた。
だけど、それは勘違いだったのかもしれない。めぐみちゃんの性格も、不気味な真澄くんのことも、そして私自身のこともなにもわかっていなかった。
自分の正義と、復讐のために、恐ろしい感情が体のなかで渦巻いている。こんな自分がいたことを、14歳の今になって、初めて気づいた。
真澄くんの言う通りに、私はレポートデバイスを操作する。
「なにを通報するのか選択肢が出るときに『公共施設・道路の不備』を選んで」
すると、今までみたことのない文字が画面に表示された。
【通報の根拠となる証拠を添付できます。証拠はカメラアプリによる写真・動画のほかに、音声録音機能が提出できます。証拠が信用に足るものだった場合、信用ポイントの数値に関わらず、適切に報告が受理されます】
黒い丸がくるくると回る。
――カメラアプリが利用できます。
――リングデバイスの音声機能が利用できます。
「オーケー。それでホーム画面に戻ったら、ふたつのアプリが出ているはず」
言われた通りに戻ると、たしかに機能がふたつ増えていた。
「こんな機能が隠されていたなんて……」
カメラアプリを開くと、レポートデバイス越しに私のお弁当が見えた。
レポートデバイスの背面を見ると、どうやら上部にカメラが付いているらしいが、一目みただけじゃわからないぐらいに小さかった。
「帰り道にコンクリートが割れているところがあって気になってたんだよ。試しに通報してみようとしたときに、この機能があることに気づいてね。たぶん、通報の信用度が高まると思う。現に僕は酒井から殴られた痕や、教科書にされた悪戯の写真を全部添付したら、五分もしないうちに受理されたよ」
……それなら、証拠さえ集めることができたら通報することができる。
私と同じように、あの子達の信用ポイントだって低くすることができるかもしれない。
公共物の通報なんてする子も滅多にいないだろうから、この機能が知れ渡っていない今なら、うまく使えるかもしれない。
暗闇のなかで、一筋の光が差したような気分だった。
「真澄くんっていい人だったんだね。ごめんね、私色々と誤解していたみたい」
「いいよ。僕は恩を返したいだけ。優しい久代さんに、辛い思いをしてほしくないんだ」
真澄くん、ごめん。あなたが思うほど私はいい人間なんかじゃない。優しくもない。
教えてもらったこの機能で、あの子たちに復讐しようと考えているんだから。
「平和な教室に、なればいいよね」
生ぬるい風が土埃を巻き上げていた。
今まで、私は人間関係も学校生活も、うまくできていると思っていた。
だけど、それは勘違いだったのかもしれない。めぐみちゃんの性格も、不気味な真澄くんのことも、そして私自身のこともなにもわかっていなかった。
自分の正義と、復讐のために、恐ろしい感情が体のなかで渦巻いている。こんな自分がいたことを、14歳の今になって、初めて気づいた。