絶対通報システム
9月1日
それからというもの、真澄くんはなにかと私に話しかけてくるようになった。
相変わらず普段はひとりだったけど、気づいたら私の近くにいるのだ。
朝の挨拶ぐらいならまだいい。
一番嫌なのは、昼休みになるとじっと私の様子をうかがうように見つめてくることだった。
まるで「昼ごはんを一緒に食べよう」という声かけを待っているみたいで。今日もまた、自分の席からじっとこちらを見ている。
「うわ、また見てるよ真澄のやつ」
めぐみちゃんは露骨に嫌な顔をした。
私は小声で「ごめんね、今日は中庭でご飯食べよう」と提案する。
「だいたい、なんで杏里になついているのかな。酒井がいなくなって調子乗ってるんじゃないの?」
酒井くんを通報したことは、めぐみちゃんには話していない。
めぐみちゃんはとってもいい子だけど、お喋りなところがある。
実際、この前めぐみちゃんが教えてくれたレポートデバイスのスタイル変更のことだって、放課後にはクラス中に知れ渡っていた。秘密という話ほど、喋りたい子なのだ。通報のことが変に広まってもいけない気もしていた。
「今までずっと息苦しかった分、きっとみんなと話したいんだよ。ね、中庭行こ」
私はめぐみちゃんの背中を押すようにして教室を出た。
中庭のベンチで腰掛けると、ようやく一息つけた。
ベンチのすぐそばには大きなイチョウの木が生えていて、ちょうど木陰になっている。めぐみちゃんと昨日ミュージックビデオが公開されたアイドルの話をしていると、またねっとりとした視線を感じた。
――中庭を抜ける渡り廊下のところから、真澄くんが見ている。
めぐみちゃんもそれに気づいたようで、大きめの舌打ちをした。
「あいつ、マジできもいんだけど。通報してやろうかな」
「きっと、こんなのも少しの間だけだよ」
なだめるようにそう話したけれど、背中にはシャツが張り付いてしまうような嫌な汗をかいていた。
ちょっと通報しただけなのに、気持ち悪い。でも、そんなこと言ってしまったら……。
そのときだった。
「あれ、ふたりがここで食べてるなんて珍しいじゃん」
声をかけてきたのは、同じクラスの横島達也くんだった。
相変わらず普段はひとりだったけど、気づいたら私の近くにいるのだ。
朝の挨拶ぐらいならまだいい。
一番嫌なのは、昼休みになるとじっと私の様子をうかがうように見つめてくることだった。
まるで「昼ごはんを一緒に食べよう」という声かけを待っているみたいで。今日もまた、自分の席からじっとこちらを見ている。
「うわ、また見てるよ真澄のやつ」
めぐみちゃんは露骨に嫌な顔をした。
私は小声で「ごめんね、今日は中庭でご飯食べよう」と提案する。
「だいたい、なんで杏里になついているのかな。酒井がいなくなって調子乗ってるんじゃないの?」
酒井くんを通報したことは、めぐみちゃんには話していない。
めぐみちゃんはとってもいい子だけど、お喋りなところがある。
実際、この前めぐみちゃんが教えてくれたレポートデバイスのスタイル変更のことだって、放課後にはクラス中に知れ渡っていた。秘密という話ほど、喋りたい子なのだ。通報のことが変に広まってもいけない気もしていた。
「今までずっと息苦しかった分、きっとみんなと話したいんだよ。ね、中庭行こ」
私はめぐみちゃんの背中を押すようにして教室を出た。
中庭のベンチで腰掛けると、ようやく一息つけた。
ベンチのすぐそばには大きなイチョウの木が生えていて、ちょうど木陰になっている。めぐみちゃんと昨日ミュージックビデオが公開されたアイドルの話をしていると、またねっとりとした視線を感じた。
――中庭を抜ける渡り廊下のところから、真澄くんが見ている。
めぐみちゃんもそれに気づいたようで、大きめの舌打ちをした。
「あいつ、マジできもいんだけど。通報してやろうかな」
「きっと、こんなのも少しの間だけだよ」
なだめるようにそう話したけれど、背中にはシャツが張り付いてしまうような嫌な汗をかいていた。
ちょっと通報しただけなのに、気持ち悪い。でも、そんなこと言ってしまったら……。
そのときだった。
「あれ、ふたりがここで食べてるなんて珍しいじゃん」
声をかけてきたのは、同じクラスの横島達也くんだった。