NEVER~もう1度、会いたい~
この記者会見を受けて、新聞紙上には「日本代表死角なし」「W杯出場に向けて万全」の見出しが躍り、会見映像がニュ-ス番組で放映された。それを未来は出勤前の自宅で見た。


(翔くん、元気そうでよかった・・・。)


4ヵ月前のケガが、かなりの重傷だと聞いていただけに、帰国時の会見、更には実際に練習に参加している様子も含め、改めて彼の元気そうな姿を見て、未来はホッとしていた。


(明日の試合、楽しみだな。)


そんなことを考えながら、未来は家を出た。今日はこれから夜勤、子供たちが下校しようかという時間に出勤する違和感は、さすがにもうない。16時頃に病院に着いた未来が、着換えて病棟に入り、夕礼が始まったのが16時半。それが済むと日勤者からの申し送りを受け、担当患者への挨拶周りや検温と、ここまでは日勤と同じ流れだが、夜勤はすぐに患者の夕食の時間がやって来てその対応に追われる。


下膳や配薬、その他の患者のケアとやることは、その後も容赦なく押し寄せてくる。夜勤者は日勤者に比べて、人数も半数に満たないから、忙しさも倍増だ。


それでも21時の消灯時間を迎えると、病棟にも静けさが訪れ、看護師たちはようやく交代で夕食休憩に入る。昼間と違い、院内食堂は当然閉まっているので、弁当を持参かコンビニなどで事前に調達するのが圧倒的。しかしこの時間の食事は決して自分の健康の為にならないが、食べないわけにも・・・というのが夜勤者の悩みの種。


炭水化物を極力避け、サラダやサンドウィッチ、チ-ズ、ヨーグルトといった軽いもので済ますように心がけるのだが、夜は長い。小腹が空いて、ついお菓子や甘い物に手が伸びて、結局意味がなくなってしまう、なんていうのもあるあるの話だ。


話が少し逸れてしまった。食堂が空いてないので、病棟の休憩室でのお弁当タイム。同僚との会話は、サッカ-熱が高い城南大学病院らしく、明日のW杯予選のことに。


「高城くんが間に合ったのは大きいよね。」


「これで確勝でしょう。」


「明日が楽しみ、チケット苦労して手に入れた甲斐があったよ。」


「夜勤明けでパワ-ありますね。」


「W杯出場決定という歴史的瞬間は、この目で現地で見たいじゃない。それにやっぱりライブはいいよ、藤牧さんも今度は一緒に行こうよ。」


話は盛り上がって来るが、夜も更けて来たし、相性の悪い夏目にまた絡まれるのも嫌なので、ボリュ-ムはかなり落とさなければならなかった。
< 10 / 123 >

この作品をシェア

pagetop