NEVER~もう1度、会いたい~
着信音に気が付いて、ハッと未来が目を覚まして、スマホに目をやると、デイスプレイには「本多恵」の表示が。慌てて通話ボタンを押しながら、時計に目をやると、時刻は正午近くを示している。いつの間にか眠っていたようだ。


「もしもし、ごめんね、忙しい時に。」


そう言いながらベッドを出て、立ち上がる未来。


『ううん、大丈夫。今、昼休憩に入ったところ。どうかした?』


「うん、翔くん、どうなったかなと思って・・・。」


未来は恵が昨夜、アシスタントドクタ-として現地に赴いていたのを知っていた。その流れで、今回の件に携わっている可能性が高いと思い、彼女に連絡を入れたのだ。躊躇いがちに尋ねた未来に


『やっぱりそのことか。」


予期してたという風情で答えた恵は、少し声を落とすと


『まだ対外的には、何の発表もされてないから、絶対に誰にも漏らさないようにして欲しいんだけど・・・かなりの重傷だよ。下手したら、サッカ-選手としての生命の危機かもしれない。』


と告げる。ある程度予期も覚悟もしていた未来だったが、その恵の言葉が聞こえて来た途端、全身から血の気が引いて行くのを感じていた。


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


病院に搬送された翔平は、まずは恵が言った通り、MRIによる患部の検査を受けた。検査室に彼が入ったのを見届けて、研修医である恵は病院を後にした。


検査を終え、そのあと麻酔で眠っていた翔平が目を覚ました時には、朝の光が病室の窓から注ぎ込んで来ていた。


(ここは、どこだ・・・?)


まず最初に浮かんだのそのことだった。


「翔平。」


すると呼び掛けられて、その方に目をやると、心配そうに自分を見ている両親の顔が。


「父さん、母さん。」


「ケガは痛まないかい?」


そう声を掛けられ、改めて今の状況を認識した翔平は


「今はまだ麻酔が効いてるんだろうな、なんも感じない。昨日のことは夢かとも思うが、こうやって病院のベッドの上に横たわってて、母さんたちがそんな顔して、横にいるんだから、現実なんだろうな。」


と答えて苦笑いを浮かべる。がすぐに神妙な表情になり


「心配かけてごめんな。」


と両親に頭を下げる。そんな翔平に黙って首を振ったあと


「もうすぐMRIの結果が出るそうだ、そしたら先生から説明がある。とりあえずそれを待とう。」


と告げた父の言葉に、翔平は頷いた。
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