NEVER~もう1度、会いたい~
「ところでさ・・・さっきは本当にごめん。せっかく俺のことを心配してくれたのに・・・あんな言い方するつもりはなかったんだ。本当に済まなかった。」


そう言って頭を下げる翔平に


「ううん、翔平がイラッとするのは無理ないよ。こんな重傷を負ってる時に、私が出しゃばって、つい余計なこと言っちゃって・・・。」


朱莉は答えて、首を振る。


「そんなこと、ねぇよ・・・。」


翔平の言葉のあと、一瞬顔を見合わせた2人だったが、すぐに視線をお互い逸らしてしまい、気まずい空気が流れる。少しの沈黙の後


「翔平の気持ちはもう決まってるの?」


朱莉は改めて尋ねた。


「まぁな。今は麻酔が効いてるからいいが、痛ぇなんてもんじゃねぇんだよ。だからとにかく少しでも早く手術してくれよって言うのが本音。それに黒部さんだっけ?あの医者もなんとなく信頼できそうだし。」


「そう?どの辺が?」


「改めて聞かれると困るな。勘というか雰囲気と言うか・・・『絶対に成功するなんて言えない』って言ってたけど、考えてみれば、そんなの当たり前のことで。でももしやれる自信がなかったら、引き受けるなんて言わないし、言えないんじゃねぇかな?」


「・・・。」


「とにかく根拠は何もない。だけど俺はあの先生になら、この身体をお任せしても大丈夫なんじゃないか、今はそう思ってる。」


「そっか・・・翔平の勘は鋭いからね。きっとそれが正解なんだと思う。」


「ああ。」


そして2人は、今度は顔を見合わせて笑顔を交わした。


「とりあえずはクラブからの連絡を待つしかねぇな。まさかドイツの医者に診せろとは言って来ないとは思うが・・・。ただやっとケガから復帰したと思ったら、またこの有様だからな。クビになっちまうかも?」


「まさか。」


「さっきの話だと手術がうまく行って、なおかつリハビリも順調に進んだとして1年以上かかるって話だろ。今度のW杯は当然間に合わないし、クラブにだっていつ戻れるか・・・。だとしたらもういらないって言われても不思議はねぇだろ。」


「そんなわけないでしょ?日本のエースストライカ-が、バカなこと言わないでよ。」


と朱莉は声を励ますが


「まぁ、そんなことを現実にされたら、訴えてやるけどさ。でもまぁさすがにこの状況は、正直凹むぜ。」


翔平は自嘲気味に苦笑いを浮かべる。


「翔平・・・。」


いつもポジティブな翔平の思わぬ弱音に、朱莉は言葉を失った。
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