NEVER~もう1度、会いたい~
その日の夕方、日本サッカ-協会から発表があった。事故発生から20時間近くが経過したが、それまで翔平のケガの状況や今後の対応等のリリ-スが一切なく、ネットでは心配する声が上がっていた。


ケガの程度は、かなり憂慮される状況で、早急な手術が必要であり、翔平本人、並びに所属クラブ、当協会との協議の結果、現在入院中の城南大学病院から都内にある京王記念病院に転院の上、同病院で明後日13時より、手術を受けることになったという内容であった。


そのニュ-スを、未来は自室で明日の出勤の準備をしている時に聞いた。


「えっ、何で?」


思わず、その言葉が口から出た。


発表内容には、なぜ転院をすることになったのか、またリリ-スがなぜここまで遅くなってしまったのかの経緯には一切触れられておらず、記者会見という形を取らずに、質疑応答に応じなかった協会の姿勢には、報道陣はもちろん、ネット上でも不満の声が上がった。


一方、負傷退場以来、多くのコメントが寄せられていた翔平のSNSには


『ご心配をお掛けいたしましたが、京王記念病院にて手術を受けることになりました。決まった以上は、全て先生にお任せし、術後はリハビリに励み、一刻も早くピッチに立てるように努力いたしますので、引き続き応援をよろしくお願いいたします。』


マスコミリリ-スと合わせるように、本人からのメッセ-ジがケガ後、初めて掲載され、それにまた多くの励ましのメッセ-ジが寄せられていた。


そんな状況を見ながら、しかし未来は


(なんでわざわざウチの病院から都内の病院に移る必要があるの?少しでも早く手術をしなくちゃいけないはずなのに・・・。)


という疑問がどうしても拭えなかった。もう1度、恵と連絡と取ってみようかと、スマホのボタンを押しかけたが


(決まってしまったことは、もうどうしようもないし、明日病院に行けば、事情もある程度わかるはずだから。)


そう思い直し、スマホを手から離した。


翌朝、早めに出勤した未来だったが、彼女が病院に着いた頃には、既に翔平は京王記念病院に出発した後だった。渋滞に巻き込まれるのを避けるのと、彼の出発に合わせて、マスコミやファンが殺到して、想定外のアクシデントや混乱が起こるのを避ける為の処置だった。
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