NEVER~もう1度、会いたい~
(そうか、翔くん、もう行っちゃったんだ・・・。)
まだ入院していたとして、自分が翔平と接触出来る機会はまずなかったことはわかっていたが、未来は少し気落ちしていた。それでも
(今、私を必要としてるのは翔くんじゃない、私が担当している患者さんなんだから。)
気を取り直し、また業務に励む。
「おはようございます。」
朝礼が終わり、この日まず最初に未来が訪ねたのは大村理央の病室だった。
「あ、未来さん、おはようございます。」
ベッドで静かに本を読んでいた理央は、未来の顔を見るとニコリと微笑んだ。
「どう、気分は?」
「お陰様で、今日は気分がいいです。」
「そう、ならよかった。じゃ、熱計ろうか。」
「はい。」
未来から渡された体温計を受け取ると、理央は左腋の下にはさむ。すぐにピピッと電子音が鳴り、理央の手から未来の手へ体温計が戻る。
「36.1、平熱だね。理央ちゃん、これから院内学級だよね。」
「はい、昨日はちょっと調子悪くて、ベッドサイドになっちゃったから・・・今日は楽しみです。」
「そっか。じゃ、今日は遅れないようにね。」
「はい。」
理央は13歳の中学1年生。気管支喘息の持病があり、未来がこの病院に着任する前から、入退院を繰り返している患者だった。今回は3週間ほど前から入院して、治療に当たっているが、病状はなかなか安定してないのが現状だった。
未来が理央の側を離れ、別の病室を周っていると
「未来さん、行って来ます。」
彼女の姿を見て、教科書や筆記用具の入ったバックを携えた理央が声を掛けて来る。
「あ、行ってらっしゃい。」
振り向いた未来が笑顔を送ると、理央も嬉しそうに笑顔を返して来ると歩き出す。入院中でも勉強に遅れが生じないように設置されている院内学級は、同年代の子供たちとも触れ合える貴重な場であり、単調でいろいろな制限も多い入院生活の中で楽しみにしている子供が多い。その気持ちは未来にはよくわかる。
そして、この日のカリキュラムを終え、理央が病室に戻って来た夕方まで、第二病棟の時間は、比較的穏やかに流れて行った。
そして、その間に翔平の転院の経緯が、未来の耳に入って来ることはなかった。
まだ入院していたとして、自分が翔平と接触出来る機会はまずなかったことはわかっていたが、未来は少し気落ちしていた。それでも
(今、私を必要としてるのは翔くんじゃない、私が担当している患者さんなんだから。)
気を取り直し、また業務に励む。
「おはようございます。」
朝礼が終わり、この日まず最初に未来が訪ねたのは大村理央の病室だった。
「あ、未来さん、おはようございます。」
ベッドで静かに本を読んでいた理央は、未来の顔を見るとニコリと微笑んだ。
「どう、気分は?」
「お陰様で、今日は気分がいいです。」
「そう、ならよかった。じゃ、熱計ろうか。」
「はい。」
未来から渡された体温計を受け取ると、理央は左腋の下にはさむ。すぐにピピッと電子音が鳴り、理央の手から未来の手へ体温計が戻る。
「36.1、平熱だね。理央ちゃん、これから院内学級だよね。」
「はい、昨日はちょっと調子悪くて、ベッドサイドになっちゃったから・・・今日は楽しみです。」
「そっか。じゃ、今日は遅れないようにね。」
「はい。」
理央は13歳の中学1年生。気管支喘息の持病があり、未来がこの病院に着任する前から、入退院を繰り返している患者だった。今回は3週間ほど前から入院して、治療に当たっているが、病状はなかなか安定してないのが現状だった。
未来が理央の側を離れ、別の病室を周っていると
「未来さん、行って来ます。」
彼女の姿を見て、教科書や筆記用具の入ったバックを携えた理央が声を掛けて来る。
「あ、行ってらっしゃい。」
振り向いた未来が笑顔を送ると、理央も嬉しそうに笑顔を返して来ると歩き出す。入院中でも勉強に遅れが生じないように設置されている院内学級は、同年代の子供たちとも触れ合える貴重な場であり、単調でいろいろな制限も多い入院生活の中で楽しみにしている子供が多い。その気持ちは未来にはよくわかる。
そして、この日のカリキュラムを終え、理央が病室に戻って来た夕方まで、第二病棟の時間は、比較的穏やかに流れて行った。
そして、その間に翔平の転院の経緯が、未来の耳に入って来ることはなかった。