NEVER~もう1度、会いたい~
その日の夜に行われた壮行試合。翔平が出場していないので、あまり興味も湧かなかった未来は、夕食を摂りながら、TVを見るとはなしに見ていたが、再三の得点チャンスを活かし切れない日本代表が、結局0-2で敗れ、スタジアムはため息に包まれた。


「残念ですが、今日の試合は完敗ですね。高城不在で決定力に欠ける弱点がモロに出てしまった感じです。松前監督は戦略を見直さざるを得ないでしょうけど、正直W杯に向けて不安が残りましたね。」


TVの解説者の指摘を待つまでもなく、ネット上では代表チ-ムの得点力不足を指摘する声に始まり、監督の采配や代表メンバ-選出への疑問や批判・・・サッカ-代表が敗れると、途端にネットが沸騰しだす、よくある光景が現出していた。


特に目立ったのは、やはり翔平不在を嘆く声で


『やっぱり翔平がいないと厳しいよな。』


『わかっちゃいたけど、あまりに穴が大きすぎ。』


『あのオーストラリアの選手、マジで殴りてぇ。』


『奇跡が起こって、W杯間に合わないのか?』


『そういや、最近ほとんど翔平についての報道がないけど、リハビリ順調なのかな?』


と言ったコメントが並んでいた。未来が覗いてみると、翔平のSNSにもコメントが殺到していて、今日の試合のことだけでなく、翔平を心配する声も多く寄せられていた。


(みんな、今日の試合を見て、今更ながら翔くんの存在を思い出したって感じだね。でも本当に翔くん、今どうしてるんだろう?リハビリ順調なのかな・・・?)


未来は思いを馳せた。


翌日のスポ-ツ紙でも、昨日のサムライブル-の戦いぶりに対する批判的な論調が相次いだ。中には代表選手の入れ替え、果ては松前監督の更迭にまで言及する向きもあり、外野はいよいよ姦しいことになっていた。


その日の午後、翔平のSNSが更新され、コメントが掲載された。


『お久しぶりです。昨日のサムライブル-のW杯前の国内最終ゲーム、僕も病院のベッドで応援していましたが、残念な結果に終わりました。チ-ムの歯車がうまくかみ合わなかった印象がありますが、W杯までまだ2ヶ月近い時間があります。その間に松前監督、長谷キャプテンを始めとした選手、チ-ムスタッフたちは一致団結、着実に状態を上げてくるはずです。今のサムライジャパンには世界に伍して戦える力が十分にあります。サポ-タ-のみなさんも、そんな彼らに引き続き、暖かく絶大なご支援をよろしくお願いします。

さて、僕の近況報告ですが、現在、1日も早いピッチへの復帰を目指して、日々リハビリに励んでいます。まだ具体的な道筋をご報告できる段階ではありませんが、焦らず、一歩一歩進んで行きたいと思います。』


沸騰するサポ-タ-たちを宥めるようなコメントだった。
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