NEVER~もう1度、会いたい~
「でも・・・。」


ここで朱莉は少し声を潜めた。


「手術、失敗なんじゃないかって、噂が流れてるの。」


「外じゃ、だいぶマスコミが騒いでるみたいだな。」


翔平はまた苦笑いを浮かべたが


「正直、俺にはわからんよ。そうなのかもしれないし、俺のケガはそれだけ重いということなのかもしれない。ただ日本で有数のスポ-ツ外科医の先生が『手術は成功した』とおっしゃる以上、俺はそれを信じるしかないだろ。」


すぐに表情を改めて言った。


「実は、翔平のチ-ム関係者に呼ばれてさ・・・。」


朱莉はひと月ほど日本を離れていた。西園寺グル-プ総帥である叔父のスタッフとして、定期的にドイツを訪れている彼女は、滞在中は、翔平の通訳を勤めることがあり、当然チ-ムとも関わりがある立場だった。


「向こうは今回の遠山先生の手術と京王記念病院の対応に、かなりの不信感を持ってる。というより、こっちで翔平で治療を受けてることが、そもそも気に入らないみたい。」


「今更、その話かよ。」


呆れたような声を出す翔平。


「それはそうなんだけど、でも実際に翔平の症状に大きな改善が見られないのは事実だし、病院や協会が診断結果やMRI画像の提供なんかに非協力的みたいで、かなり苛立ちを募らせてる。」


「そうなのかよ、それはさすがに拙いな。だって俺はあくまで今は、ドイツクラブチ-ムの所属選手なんだから。」


まさかそんな状態になっているとは知らず、翔平は驚きを隠せない。そこへ、マネ-ジャ-が入って来た。


「あ、西園寺さん、お帰りでしたか。」


「マネ-ジャ-、今朱莉から聞いたんだけど、クラブがだいぶ怒ってるらしいじゃない?」


普通に朱莉に声を掛けているマネ-ジャ-に、ややイラついた表情で翔平が言う。


「うん、まぁ・・・。」


「なんでそんな大事なこと、俺に教えてくれないの?」


「いや、翔平にはリハビリに専念してもらおうと思って・・・。」


「それとこれとは話が別でしょ。だいたい、この病院もおかしいよ、所属チ-ムに俺の現状を報告しないなんて、そりゃチ-ムが怒るのも無理ないよ。」


「それで、今また俺のところにクラブから連絡が来て、とにかく1度ドイツに帰国して、こちらの病院の診断を受けろって言って来たんだ。」


「えっ、そうなの?」


翔平は思わず、朱莉と顔を見合わせた。
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