NEVER~もう1度、会いたい~
次の日から、翔平のリハビリが始まった。


「1週間、リハビリ頑張れ。そしたら退院だ。」


担当医師にハッパをかけられ、翔平は内心躍り上がった。


(よし、頑張れば夏休みが終わる前にここから出られる。)


退院しても松葉杖がまだ手放せず、自由に動き回れるわけではないが、それでもここに閉じ込められているよりは遥かにマシだと、翔平は俄然張り切っていた。


生まれて初めて体験するリハビリは、とにかく痛かったが、それでも目標があって頑張れた。


「翔平はガッツがあるな。さすがはサッカー選手だ。」


トレーナーにも褒められ、得意満面でリハビリルームを出た翔平。


この日から母親は仕事に復帰して、来ていなかった。また病院内の移動も慣れる為に極力、車椅子を使わず、松葉杖で歩くようにとの担当医の指示で、翔平は1人でゆっくり、病室に向かった。


(不便なもんだな。でも1人でなんとか動けるって、やっぱりいいな。)


そんなことを考えながら、エレベーターに乗り込んだ翔平。自分の目的地である5階のボタンを押すとエレベーターは動き出し、すぐに2階に止まると、扉が開いた。


そして次の瞬間、翔平は息を呑んだ。


(いた!)


そうだ、あの少女だ。相変わらず、青白い顔色で、でもしっかりとした足取りで乗り込んで来た彼女は、目が合った翔平にコクリと軽く会釈をすると、4階のボタンを押した。


(ひとつ下の階にいるんだ。)


エレベーターが動き出す、4階まであっと言う間。


「未来ちゃん、院内学級の帰り?」


そんな言葉が思わず口から出て来て、自分で驚く翔平。もっとも見ず知らずの少年から、名前で呼び掛けられた彼女はもっと驚いた顔をして、翔平を見たが


「ひょっとして、この前、屋上で一緒だった・・・?」


ふと気付いたように言う、か細い彼女の声に


「そう。俺、高城翔平!」


翔平は夢中で答えていた。そんな彼にニコリと微笑んで


「藤牧未来です。じゃ、また。」


ちょこんと頭を下げてエレベ-タ-を降りようとした未来に


「ねぇ、一緒に昼ごはん食べない?」


翔平は引き止めるように言う。その言葉には、口にした方も、言われた方もまたまた驚いたが


「看護師さんに聞いてみるね。」


未来は答えていた。


「じゃ、待ってる。」


その答えにホッとしながら、翔平は未来と一緒にエレベ-タ-を降りた。
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