NEVER~もう1度、会いたい~
その後も質問に丁寧に答えていった翔平は、最後に


「今度の試合の大切さは、誰よりもわかっているつもりです。僕にとっては生まれ故郷にあり、またかつて自分がプレ-をしたチ-ムの本拠地でもあるさいたまスタジアムで、このような大切な試合を戦えることは、大変名誉であり、また楽しみでもあります。3日後の試合は、僕はもちろん、チ-ム全員が全力を尽くして戦います。そして必ず勝って、ワールドカップの出場権を勝ち取りたいと思います。どうか、みなさんの熱い声援をよろしくお願いします!」


と言って会見を締めくくった。そして記者団に一礼して立ち上がった翔平に


「高城選手、最後にポーズをお願いします。」


記者団から声が飛ぶ。その声に笑顔で頷いた翔平はガッツポ-ズをして見せると


「ベタ過ぎます?」


サッカ-選手には珍しい七三黒髪ショ-トスタイルの見るからに好青年といった面持ちの翔平は照れ臭げにそう言って、記者団を笑わせた。やがて撮影タイムも終わり


「それでは失礼します。」


と改めて一礼すると、フラッシュの放列に見送られるように会見場を後にした。会場を出て、さすがにホッとした表情を浮かべた翔平に


「お疲れ様。」


と近付いて来た1人の女性。彼女の姿を見て、翔平も笑顔になる。


「すぐにホテルに向かうの?」


「ああ、監督やチ-ムメイトにだいぶ心配を掛けたからな。とりあえず顔を見せて、安心させないと。」


「わかった。じゃ、またあとでね。」


笑顔を交わし合うと2人は離れる。そして関係者に案内されて、車に乗り込んだ翔平は、報道陣や集まったファンに手を振ると、空港を後にした。その様子を少し離れたところで見守っていた先ほどの女性は


「なんとか間に合った・・・よかったね、翔平。」


そう独り言ちると、踵を返す。


翔平を乗せた車は、高速道路を通って都内に入ると、先ほどの言葉の通り、監督以下のチ-ム関係者が泊まるホテルの駐車場へ。そこでも待ち受けていた報道陣に一礼し、ホテルに入った翔平は、代表チ-ムの面々の待つミーティングルームに。彼が姿を現すと、一斉に拍手が起こる。


「みなさん、遅くなりました。また大変ご心配をお掛けしました。」


チ-ムメイトたちに一礼した翔平が席に着くと、正面の席の松前晋(まつまえすすむ)監督が口を開いた。
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