NEVER~もう1度、会いたい~
翌日、翔平がリハビリを終えて、レストル-ムに入ると、既に未来が待ち受けていた。


「あっ翔くん、お疲れ様。」


「ああ。未来、待たせてごめんな。」


「ううん、全然大丈夫。」


なんて会話を交わしながら、翔平が 不自由な身体を椅子に沈める。そして


「いただきます。」


手を合わせ、合唱した2人が箸を手に取る。決して豪華でも美味とも言えない病院食、しかし今の未来と翔平には、食べたことのないご馳走に思える。2人で一緒にいるその時間が、そう思わせてくれるのだと、2人は気が付いていただろうか・・・?


次の日も、その次の日も2人は昼のひと時を一緒に過ごした。2人の仲睦まじい様子が、ナースステ-ションの話題となり、未来が院内学級の仲間から冷やかされる材料になって行き・・・数日が過ぎた。


その日も翔平はリハビリに励んだあと、母親と共に担当医に呼ばれた。


「翔平、順調だぞ。」


診察室に入るや、担当医が笑顔で話して来た。


「レントゲンを見ても、予想以上に骨の着きが早い。リハビリも順調だと、トレ-ナ-から報告を受けた。これなら、明後日にでも退院できそうだぞ。」


「えっ?」


「そうですか、先生ありがとうございます。翔平、よかったわね。」


「う、うん・・・。」


喜ぶ母親の横で、あれだけ退院を待ち侘びていたはずなのに、翔平の表情は冴えない。


(退院したら、未来に会えなくなる・・・。)


そんな思いを抱きながら、レストル-ムに入ろうとした翔平に


「あ、翔平くん。さっき下の病棟から連絡があって。未来ちゃん、今日は来られないって。」


看護師の1人が声を掛けて来る。


「えっ、どうしたんですか?未来。」


「うん、昨日の夜から調子があまり良くないらしいんだよね・・・。」


その言葉に、翔平は凝然となる。それから病室で1人、味気ない昼食を摂った後、しばらく悶々とした時間を過ごしていた翔平だったが、ついに意を決すると、ベッドの横の松葉杖に手を伸ばした。そして、ベッドを降り、ゆっくりと病室を出て、エレベ-タ-に乗り込む。もちろんワンフロアの下の未来の病室を訪ねる為だ。


病室ナンバ-は聞いていたが、実際に訪ねるのは初めてだった。緊張の面持ちで中に入った翔平の目に映ったのは、いくつもの管を身体に繋がれ、静かにベッドで眠っている未来と、その枕元で心配そうに彼女を見つめる女性の姿だった。
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