NEVER~もう1度、会いたい~
「あの・・・。」


勇気を出して、声を掛ける。その声に振り返った女性に


「こんにちは、僕、高城翔平って言います。」


翔平が自分の名前を告げると


「あなたが翔平くん?初めまして、未来の母です。いつも未来と仲良くしてくれて、ありがとうね。」


笑顔を浮かべて、答えてくれた。


「いえ・・・。あの、未来・・・ちゃん、大丈夫ですか?」


恐る恐る尋ねる翔平に


「昨日の夜、発作が起きちゃってね。ここのところ、調子が良かったから、少し安心してたんだけど、疲れがたまるとね・・・。」


景子は答えて、フッとため息をついた。


「僕が・・・無理に毎日、お昼一緒に食べようって誘ったからですよね?」


「そんなことないわ。あの子、やっと同い年のお友達が出来たって、凄く喜んでて、翔平くんとお昼食べるの毎日楽しみにしてたのよ。でも・・・未来の病気は、結局お薬だけじゃ治らなくて。手術も何度か受けて、実は今回の入院直後にも受けたんだけど、完治には至らなくてね・・・。」


「そうだったんですか・・・。」


心臓が悪いことは、未来の口から聞いてはいたが、出会ってから、未来の比較的元気な姿しか見てなかった翔平にとって、それは思いもしなかった現実だった。


(未来・・・。)


翔平は未来を見つめる、だが彼女は昏々と眠り続け、結局彼が病室を訪ねている間に目覚めることはなかった。


翌日、翔平に正式に退院許可が出た。主治医の診断を固い表情で聞いたあと、翔平は未来のもとに向かった。まだベッドを離れることは難しかったが、彼女は目覚めていて、彼の姿を見て、嬉しそうに微笑んだ。


「翔くん、心配かけてごめんね。」


「大丈夫?苦しくないか?」


心配でたまらんと言わんばかりに問い掛ける翔平に


「今朝はだいぶ楽になった。明日はお昼、一緒に食べられるかな・・・?」


答えた未来の言葉に、翔平は胸をつかれる。一瞬、躊躇った後、彼は告げる。


「実は未来、俺・・・予定が少し早まって、明日退院することになった。」


「えっ、本当?よかったじゃない、おめでとう。」


明るい声で祝福する未来に


「めでたくなんかない!」


翔平は思わず大声を出していた。


「翔くん・・・。」
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