NEVER~もう1度、会いたい~
ようやく、翔平の横に並んだ未来。


「翔、くん・・・。」


呼び掛けて、未来はそっと翔平を見る。そんな彼女を優しい瞳で見上げた翔平は


「もう本当に身体は大丈夫なのか?」


とやはり優しい口調で尋ねる。


「うん。今は完全に健常者と同じ生活が出来てる。」


「そうか・・・よかった、本当によかったな。」


未来の返事に、翔平は心の底から、安心したように、そして嬉しそうに言った。その彼の表情を見て


「ありがとう・・・。」


と答えた未来の瞳からは次の瞬間、ドッと涙が溢れ出して来る。


「翔くん、ごめんなさい。ごめんなさい。」


そう言って、また頭を下げる未来に


「未来、謝るなよ、謝る必要なんかない。ただ俺はあの時、何で俺の前からお前が姿を消したのか?その理由が知りたい。そしてあれから今日まで、どうしていたのか、それが知りたいんだ。」


「翔くん・・・。」


「話してくれるよな?」


その翔平の言葉に、未来はコクンと頷き、そして彼の方を向いた。


「東京の病院に転院して、検査とかがあって、2週間ほど入院したんだけど、その後、退院して新しい学校に通い始めた。とにかく引越してからは信じられないくらいに体調が安定して来て、先生も今の状態なら手術は十分に可能って言って下さって。ただその先生は、手術の予定が半年以上先まで決まっているような非常にお忙しい方で、なんとかスケジュ-ルをやり繰りしていただいて、4月の上旬、高校に上がってすぐになっちゃうんだけど、そこで手術をしようってことに決まったんだ。」


「そうだったな。」


「あとはその時に向けて、準備を進めるだけ・・・のはずだった。だけど、それが突然暗転した、3月に入って、私は自宅で発作を起こして倒れた。すぐに救急車で運ばれて緊急入院して、とりあえず当直の先生が応急処置をして下さって。その時はそれでいったん落ち着いたんだ。」


「・・・。」


「でもタイミングが悪いことに、主治医の先生は携わっているもう1つの病院でのオペの為に、出張中だった。戻られたのが3日後で、すぐに診て下さったんだけど、『4月まではとても待てない。他のオペのスケジュ-ルを調整して、緊急手術が必要だ。』と言う診断が下ったの。」


「なんでそんな容態が急変したんだよ。」


「説明すると、専門的な難しい話になっちゃうんだけど、私には従来治療を受けていた症状の他に、実は別の症状もあったんだけど、発見が難しくて、ずっと見逃されて来た。それが顕在化して、いわば合併症のような形になってしまったのよ。」


「それって完全な医療ミスじゃねぇか。」


憤りを露にする翔平に、未来は小さく頷いた。
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