NEVER~もう1度、会いたい~
「そして手術は行われた。結果は・・・当面の危機は乗り越えられた。だけど、このままなら長くても3年、恐らくは2年で私の心臓は完全にもたなくなるって言われたの。」


未来は淡々と話しているが、その内容の凄まじさに、翔平は言葉を失っている。


「それを防ぐ為には、一刻も早い再手術が必要だった。ただし、それは当時、日本では例のない難手術で、国内で有数の心臓外科医である先生をもってしても成功確率は2割ないって、はっきり言われてしまった。」


「・・・。」


「言葉を失う私たちに先生はこう続けたの。『アメリカに私が師事した高名な心臓外科医がいます。私は彼に未来さんの現状を報告して、意見を聞きました。それに対する彼の返事は、相当な難手術になるが、成功の可能性はある。私でよければ、チャレンジさせて欲しいということでした。はっきり言って、リスクは相当あります。まず、渡米に今の未来さんの身体が耐えられるか。それにあまりにも現実的な問題として費用のことがあります。手術そのものはもちろん、成功してもしばらくはあちらに滞在することになるでしょうから。ですが、彼は安請け合いは絶対にしない人物です。私も出来る限りのバックアップはいたします。』って。」


「・・・。」


「先生の言葉に、両親が即答してくれた。『費用はなんとかします、未来が助かる道があるなら、それを放棄する選択肢は、私たちにはありません。』って。そして私たちは、取る物もとりあえずという表現がぴったりのような状況で渡米したの。先生は多忙なスケジュ-ルをやり繰りして、私に同行してくれて、ケアしてくれた。そして、向こうの先生に全てを引き継ぐと、とんぼ返りで帰って行かれた。そして、私の体調が整うのを待って、手術が行われた。手術は1回では済まずに、結局4回に渡った末、完治のお墨付きをいただいて、日本に帰って来た時には私は18歳、普通に学校に通っていれば、もうすぐ高校を卒業するっていう時期だったんだ。」


「丸3年掛かったのか・・・。」


「うん、正直もうダメかなって思うことも何度もあったけど、なんとか、ね・・・。」


未来はそう言って微笑を浮かべた。


「そんなことになってたなんて、全然知らなかった。」


「そうだよね、黙って急にいなくなったんだもん。でも、本当に時間が・・・なかったんだよ。ごめんなさい。」


ポツンと呟くように言った翔平に、未来は深々と頭を下げた。
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