先生、優しくしないで

好きな人と同じ年齢だったら、恋はもっと楽しいものだったのか。好きな人を目にするたびに、宮水有紗（みやみずありさ）は心の中で思う。

イギリスの首都、ロンドンにある高校に十七歳の有紗は通っている。百年もの歴史があり、伝統を重んじるこの高校には、俳優のように顔立ちの整った先生がいることで有名である。

放課後、有紗は図書室に来ていた。授業で出された課題に使う資料を探すためだ。二メートルほどの高さがある棚には、課題に使えそうな資料はもちろん、小説や雑誌まで揃っている。

「えっと……確か、資料はこの辺りに……」

資料が揃えられている棚を探し、十五分ほど時間をかけてようやく棚を見つけることができた。この高校の図書室は、まるで街中にある図書館のように広いためだ。

「んっ！」

目当ての資料を取るため、有紗は踵を浮かせて必死に手を伸ばす。資料は、有紗の身長よりも少し高い場所にあった。

「とど、かない……！」