君の音がなくても
◇
「……別れたいんだ」
カフェという楽しい空気の中で、やけに落ち込んだ様子を見せていると思えば、目の前に座る紅はそんなことを言った。
別れたい。
私は、紅の言葉を頭の中で繰り返す。
何度か繰り返したところで、ようやく、意味を理解した。
「わかった」
私があっさりと受け止めてしまったからだろうか、顔をあげた紅は泣きそうに見える。
「……じゃあね」
なにかほかのことを言いたかったように感じたけど、紅はお金を置いて、逃げるように店を出ていった。
紅の一言で、私たちの関係は終わった。
それなりに長い時間を共にしていたはずなのに、たった一つの言葉で、解散。
こんなにも呆気ないとは、思っていなかった。
いい関係が築けていると思っていたのに。
それは、私の勘違いだったらしい。
紅がいなくなったのに、二人分の飲み物が届く。
紅が好きな、カフェラテ。
普段は飲まないけれど、届いてしまったから、少し手をつける。
肌寒くなってきたというのにアイスを頼むなんて、紅らしい。
「……甘」
ブラックコーヒーを好む私には、カフェラテは少し甘い。
もともとそこまで好みが一致していたわけじゃない。
私は苦いもの。紅は甘いもの。
私はアウトドア派。紅はインドア派。
ホラー系が見たい私と、ヒューマンドラマが見たい紅。
ただ、お互いに居心地がよかっただけ。
それでも、十分だと思っていたけど、紅は違ったようだ。
コーヒーだけを飲み干して、私は席を立った。
カフェという楽しい空気の中で、やけに落ち込んだ様子を見せていると思えば、目の前に座る紅はそんなことを言った。
別れたい。
私は、紅の言葉を頭の中で繰り返す。
何度か繰り返したところで、ようやく、意味を理解した。
「わかった」
私があっさりと受け止めてしまったからだろうか、顔をあげた紅は泣きそうに見える。
「……じゃあね」
なにかほかのことを言いたかったように感じたけど、紅はお金を置いて、逃げるように店を出ていった。
紅の一言で、私たちの関係は終わった。
それなりに長い時間を共にしていたはずなのに、たった一つの言葉で、解散。
こんなにも呆気ないとは、思っていなかった。
いい関係が築けていると思っていたのに。
それは、私の勘違いだったらしい。
紅がいなくなったのに、二人分の飲み物が届く。
紅が好きな、カフェラテ。
普段は飲まないけれど、届いてしまったから、少し手をつける。
肌寒くなってきたというのにアイスを頼むなんて、紅らしい。
「……甘」
ブラックコーヒーを好む私には、カフェラテは少し甘い。
もともとそこまで好みが一致していたわけじゃない。
私は苦いもの。紅は甘いもの。
私はアウトドア派。紅はインドア派。
ホラー系が見たい私と、ヒューマンドラマが見たい紅。
ただ、お互いに居心地がよかっただけ。
それでも、十分だと思っていたけど、紅は違ったようだ。
コーヒーだけを飲み干して、私は席を立った。
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