21トリソミー
「平気」

 奈子に力強く頷く。奈子は言いたいことを全部言えたかもしれないが、私にはまだたくさんある。

「そっか。じゃあ、私は帰るね。なんかあったらいつでも逃げ込みにおいで」

 奈子は私の頭をクシャクシャと撫でて、ソファから立ち上がった。

 私も一緒に立ち上がり、玄関まで奈子を見送ると、

「ふぅ」

 大きくひとつ息をつき、また友樹がいるリビングへ戻った。

 さっき座っていた位置と同じところに腰を掛け、友樹を見つめる。冷静に話し合おう。と思っていたのに、

「私が酷く落ち込んで、なかなか立ち直れないでいたから、松岡さんに揺らいだの? さっさと気持ちを切り替えなかった私が悪いの? そんなに簡単に気持ちの立て直しなんか、私には出来ないよ‼」

 悔しさと悲しみが混ざり合って、ヒステリックな大声が出てしまった。
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