21トリソミー
「あのね、赤ちゃんが出来たよ‼」

 まだぺたんこのお腹に手を当てながら友樹に笑顔を向けると、

「…………そっか」

 友樹は、一時停止されたドラマの中の人の様に、一瞬ピタッと動作を止めた後、伏し目がちに返事をした。

『出来てしまったか』友樹の心の声は、顔を見れば分かった。

 友樹は当然子作りには積極的ではなかった。でも、いい大人が避妊をせずに性行為をすれば、子どもが出来る可能性があることは知っていた。だから、友樹には覚悟があったのだろう。諦めかもしれないが。いずれにせよ、心構えは出来ていただろう。

『誕生を喜ばれない子どもを産むなんて』『生まれてくる子供が可哀想』『無責任だ』『自分勝手だ』

 何の関係もないくせに、赤の他人が私の状況を見たらきっとこう言うだろう。

 誰が何と言おうとも、この子は私が心から望んで待ちに待っていた命だ。
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