21トリソミー
「きょうだい児を作るなら、きょうだい児の人生も尊重しなきゃだめだよ。きょうだい児を、障がいを持つきょうだいの介護要員にするのは違うと思う。下の子を当てにするんじゃなくて、下の子が苦労しないように産んだ者が責任を持って、障がいを持つ子どもの為にお金を貯めたり、施設を探したりするべきだと思う」

 怒りなのか不満なのか分からないものを飲み込むように、奈子がゴクリと豚肉を喉に通した。

「お腹の子を障がい児って決めつけた言い方しないでよ」

 仮定の話で忠告をしてくる奈子に苛立って、私も怒り任せにハンバーグを奥歯で噛み砕く。

「私は、何も考えずに子どもを産む大人が嫌いなんだよ」

「結婚したら子どもが欲しくなる。当たり前のことだよ。奈子も結婚したら分かるよ」

「私は結婚しない」

「何で?」

 この問い掛けに深い意味などなかった。『何でそんなに結婚したくないの?』の、【何で?】だった。
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