21トリソミー
「小・中学校時代は『アイツの弟、バカなんだよ。治んないだよ。アイツに触ると移るぞ』とか言われて苛められて。子どもって残酷だからね。親に相談しようにも、『そんなこと言う方がおかしい。お前は弟を恥ずかしく思っているのか⁉』とか言われて、慰めてもらえないだろうことは目に見えていたし、弟は弟で『何で僕はバカなの?』って泣いてて、何も悪いことをしていない弟を責めるわけにもいかない。当たる場所がなくて、あの頃はただひたすらに【中学卒業】だけを希望に生きてた気がする。中学を卒業したら、弟のことを誰も知らない、地元の人間が誰も受験しない高校に行こうって決めてたから。だから、高校以降に出会った友だちには、誰にも弟のことを話してない」
「誰にも話してない話を、何で私にしようと思ったの?」
「香澄が、私と同じ立場になるかもしれない人間を産むかもしれないから」
奈子が、セットのサラダのレタスにフォークを刺し、むしゃむしゃと頬張る。
多分、手や口を動かすことで辛かった記憶から気を散らせているのだろう。
「誰にも話してない話を、何で私にしようと思ったの?」
「香澄が、私と同じ立場になるかもしれない人間を産むかもしれないから」
奈子が、セットのサラダのレタスにフォークを刺し、むしゃむしゃと頬張る。
多分、手や口を動かすことで辛かった記憶から気を散らせているのだろう。