21トリソミー
 自分の妻が酷い言われようをしているのに、友樹は言い返すこともなく溜息を吐いた。

 この溜息は義両親に向けてなのか、何を言っても聞き入れない私へなのか。

 こんな時、夫なら妻の味方をしてくれてもいいじゃないか。と不満に思いながらも友樹の隣に腰を下ろすと、友樹は義両親ではなく私の顔を見ながら口を開いた。

「香澄、羊水検査した?」

「……え?」

「俺、調べたんだ。NIPTで陽性でも、羊水検査で陽性が出なければ確定じゃないんだろ?」

「……そうだけど、羊水検査って流産の可能性があるんだよ⁉」

 そう。だから私は血液検査だけで赤ちゃんにリスクのないNIPTを選んだんだ。

「その確率って、0.3パーセントだろ?」

 友樹の口ぶりは『たかが、0.3パーセント』だった。

 その0.3パーセントに人の命が懸かっているというのに。
< 44 / 186 >

この作品をシェア

pagetop