21トリソミー
「香澄さん、アナタちょっとどうかしてるわよ。自分は【分からない】くせに、友樹の話は聞かない。友樹の意見が間違っているならそれでもいいわよ。でも、指摘も出来ない。だって【分からない】んだから。『みなさん、私の【分からない】を受け入れてくださいね。何も分からないけど、私の嫌がることは言わないでくださいね』って言っているように見えるの。冗談じゃない‼」

 義母が『バン‼』とテーブルを叩いた。ティーカップの中の紅茶が波打つ。私の肩もビクッと揺れた。

 私の【分からない】は、本当に【分からない】なのだが、アンケートでいう【はい・いいえ・どちらでもない】の【どちらでもない】に近いものだ。

 でも、義母の怒りに触れてしまったから、もう解答欄に【分からない】は使えない。
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