21トリソミー
「……さっきお義母さんに、『産むなら友樹と離婚して』って言われたの。もし、産みたいって言ったら、どうする?」

 産む産まないの答えが出ないから、産んだその先はどうなるのか? の疑問を友樹に投げかけてみた。

「母さん、香澄にそんなこと言ったのかよ⁉」

 友樹が義母を睨みつけると、

「だって……」

 息子に怒られた義母は、一瞬シュンとするも、チクった私に向かって小さく舌打ちした。

「……今、お腹にいる赤ちゃんは替えの利かない子だって分かってる。次に授かれたとしても、全く別の子でこの子じゃない。でも、またチャンスはあるって思ってしまうんだ。誤解しないで欲しいんだけど、『この子じゃなくても別にいい』ってわけじゃないんだ。香澄がこの子を身籠って、まだ見ぬ我が子に愛情がないわけがない。でも、この子の将来や自分が死んだ後のことを考えると、辛くて仕方がないんだ。それでも産むつもりの香澄に、気持ちが薄れないかって聞かれたら……ちょっとこの先、分からない」

 友樹が、私がついさっき封印された【分からない】をあっさり使った。
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