21トリソミー
 心のモヤモヤが晴れたわけではない。

 でも、完全同意ではないものの、友樹の主張に納得出来た。

「……羊水検査、するよ」

「……もし、陽性だったら?」

 友樹の視線が突き刺さる。

「……堕ろす」

 中絶を残忍な行為だと思っていた。でも、産むことも残酷な気がしたんだ。

 母親がこんなにも迷っていて、父親が誕生を喜んでいない。こんな二人のもとになど、この子だって願い下げだろう。

 ……それでも、生まれてきたい?

 羊水検査の結果次第でお腹の子を堕ろす決意をしたものの、やっぱり心の中は揺らぎに揺らいでいて、返事をしたくても出来ない我が子が生きているお腹を撫でながら問いかける。

 どうか、どうか。陰性であってくれ。







 後日受けた羊水検査の結果は、陽性だった。


 私は、お腹の子どもを手放した。
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