21トリソミー
 涙を笑いながら誤魔化して、籠の中のお会計を済ませると、奈子とカフェへ移動。

 奈子はチーズケーキとブラックコーヒー、私はアップルパイとココアを注文。

 節約の為にわざわざ遠くのスーパーにやってきたのに、無駄遣いしてしまっているわけだが、久しく会っていなかった友だちに会ったときまでケチりたくない。

「うまー」

 奈子は、フォークで掬ったチーズケーキを口に含んで、コーヒーを啜ると、至福の表情を浮かべながら天井を見上げ、昇天した。

 こんな小さなことで幸せを感じられる奈子を羨ましく思いながら、私もアップルパイを口に運ぶ。

「うんま」

 確かに美味い。更に奈子と一緒に食べているから楽しいのもあって、このアップルパイがここ最近食べた食べ物の中で一番美味しいんじゃないか? とさえ思った。 
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