【短】入籍予定だった彼に直前に振られたけど、その直後に大物が釣れてしまった件について。


「……っ……」


 好きで、こんなことになってるわけじゃないのに好き勝手に言って……


「……すまないが、道を訪ねてもいいだろうか?」


 この場から逃げようと思った時、私に声をかけて来たのは背が高くメガネをかけたダンディーな男性……三十歳くらいだと思う。とってもイケメンだ。


「はい、大丈夫です。どちらに、でしょう?」


 男性がわたしに話しかけたからか見ていた人たちが波が引くかのように一瞬にしていなくなった。


「……すまない。違うんだ、見ていて気分のいいものじゃなかったから」

「あ……見てたんですね。みっともないところをお見せしてしまってすみません」


 あぁ、なんだ。同情か……少し助けられたと思ったけど、なんだか辛く感じた。


「そんなことはない。君が悪いわけじゃないんだから謝る必要はない」

「……全部聞いてたんですね」

「それは申し訳ない。だが、あまりにも……似ていて」


 似てる? 何が似ているんだろうか……


「俺も、一週間前に同じ状況を経験してしまったからね」

「……え」

「婚約解消されたんだ。君と同じ役場前でね」


 経験者さんだったのね……なんだか謎の親近感が湧いてくる。




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