フラれた後輩くんに、結婚してから再会しました
一話 これってモラハラ?
「君ってほんとうになんにも出来ないんだね」
眼鏡のフレームにくいっと指をかけながら夫の裕一がそう言った。彼の視線の先にはすこし焦げてしまったまるいハンバーグが二つ、申し訳なさそうに白いお皿に乗っかっている。
ソースをたくさんかけてごまかそうとしたのだけど、ひと口めを口にする前に目ざとい彼は気づいてしまったのだ。
「ごめ……ん。ちょっと、メールしてて……」
わたしは謝りながら苦笑いした。ハンバーグは一応、わたしの得意料理だ。今日は本当に、久しぶりにちょっとだけ焦がしてしまった。でも、食べられないわけじゃない。ちゃんと味見もしたのだから、大丈夫なのに。
「でも、全然食べられるよ。ソースは美味しく出来てるから、ね」
笑顔でサラダのボウルをテーブルに置いた。だが彼はハンバーグのお皿をぐいっとテーブルの向こうに追いやると、お箸でサラダをつつき始める。
「いらないよ、そんなの」
君が食べなよね、とわたしをちらりと見てから、呆れたように「君ってさ、いったい、何年主婦やってるの?」と言ったのだ。