フラれた後輩くんに、結婚してから再会しました


さっきまでそんなことお首にも出さなかったのに、ここで急に昨夜の事を言われてしまい、さらに慌ててしまう。

「そんな、迷惑なんてないです。すごく、すごくうれしかったし、わ、わたしこそ、せっかく心配してくれたのにその、突き放すようにして……」

そこまで言って、彼を見る。ホッとしたような、寂しそうな複雑な表情だった。

「あの……。お客様、どうなさいますか?」

店員さんが遠慮がちに尋ねてくる。上月くんはさっと表情を戻すと、「会計を」と微笑んだ。

✳︎✳︎
「ありがとうございます……。本当に、すみません。いろいろと」

車に戻ると、上月くんに向かって深く頭を下げた。
「気にしないでください。……逆に気を遣わせちゃったかもしれないですね」
「いえ。素敵な服だし、自分では絶対選ばないデザインだから、とても、なんだか……そう、新鮮です」

ウエストとヒップラインはタイトに絞られ、裾に向かって柔らかく広がったマーメイドラインをみて、わたしは微笑んだ。

「胸元はすこし、俺には目の毒ですけどね」
「……っっ!?」

彼はふふ、と笑って、ハンドルを握った。
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