フラれた後輩くんに、結婚してから再会しました

 その夜、わたしは彼と初めて結ばれた。上月くんは壊れ物を扱うように優しく、大切にわたしを愛してくれて、そして、同時に恐ろしいほど貪欲に、わたしを求めた。

淡白だと思っていたわたしの体は彼に暴かれ、まるで薔薇の花びらが開いていくように彼に深く、奥までその欲を晒していった。

自分がこんな声を出すなんて知らなかった。狭いワンルームに響く声に、恥ずかしさが込み上げ、何度も口を押さえた。

「こえ、たくさん聞かせてよ」

彼はその度に、煽られたように瞳を燃え立たせた。
激しく身体を重ねた後、彼はわたしをきつく抱きしめた。

「ずっとずっと、貴女を守りたかった。俺しかその役目はできないのに、諦めなきゃいけなくて、苦しかったんだ」
そう言って瞼を閉じる。濃いまつ毛が目の縁を彩って、寝顔さえも凛々しかった。
「なんだか、たくさん回り道した気がする……。ね」
わたしは引き締まった彼の胸に頬を埋めた。
「これから、一緒に生きてほしい」
彼はわたしを抱く前にそう告げた。わたしは、しっかりと頷く。神様も、証人もいない、わたしたちだけの誓約だ。
「ね、莉子さん。いま、しあわせ?」
彼はわたしの額にキスしながら、そっと尋ねた。
「しあわせ。すごく、しあわせ。でもね、」
わたしも、彼の額に口づける。
「わたしも、貴方を守るよ。あの時みたいに、ずっとずっと、ね」

二人で瞳を合わせ、笑いあう。ささやかな門出を、星たちが祝うように故郷の空で瞬いた。


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