フラれた後輩くんに、結婚してから再会しました
声が震える。こんなふうに抗ったのは何年振りだろう。私にとっては大事件だった。でも、言わないと、なにも変わらない。
「は?」
彼は目をぱちくりとさせた。メガネの奥がぎらりと光る。
「そんなふうにって、なんだよ。妻の役割を果たせって伝えてるだけだぞ」
「役割なんて、決めたことないよ。自然とこうなっただけじゃない。だから、暮らしてるのは二人なんだから、……もっとお互いに、ええと、協力していけることもあるでしょ?」
なにが言いたいのかわからないけど、わたしは必死だった。「妻の役割」ってなに。
「君が僕の仕事について協力できるとは思えないけど。
それとも全部代わって、僕が家にいるから、同じ分稼いでくるならそれでいいよ」
「そ、れは……」
口籠もってしまったわたしに、彼は勝ち誇ったようにビールをあおる。口をぐいっと拭って冷蔵庫へ向かった。ああ、苛立っているのだ。口答えしたわたしに。
このまま続けるときっとわたしは爆発してしまう。頭のなかがかっかと燃え上がっているのがわかった。
乱暴に食器を流しに置くと、わたしは浴室へ向かった。