フラれた後輩くんに、結婚してから再会しました

 翌朝、リビングへ出るともう裕一は出勤したあとだった。キッチンに入ったが、食事をとった形跡がない。

(朝ごはん、食べてないんだ。大丈夫かな)

朝ご飯はパワーの元、食べないと動けない! と思っているくらいの私からしたらとても考えられないことなのだが、互いに気まずいのもなんとなくわかる。顔を合わせたくなかったんだろうな、と思う。

こんな時でも、体調を気にしてしまうのは十年一緒にいるからなのだろうか。苦笑が漏れる。コーヒーメーカーをセットして、洗濯機を回しにいった。

家事がひと段落して、また求人情報を見ようと携帯を手に取る。するとまた、吉村さんからメールが届いていた。
『この前は求人の件、ごめんね。それで、昨日Blueにランチにいったんだけど、求人の張り紙がしてあったの。もし、お店が気に入ったなら連絡してみたらどう?』

わたしは思わず画面を二度見した。

(え?あのお店?)

彼女は店前のチラシを写真に撮って送ってくれていた。食い入るように見つめる。確かに『Blue』の入り口だ。
求人募集 急募、とおしゃれなデザインの紙が貼ってある。電話番号も添えてあった。

すこし、胸がどきどきする。

(だって……。上月くんのお店だよ)
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