フラれた後輩くんに、結婚してから再会しました


 昔フラれた後輩の元で、働けるのかな……?そんな思いがよぎる。わたしはでも、頭をブンブン振った。

(違う違う。フラれたの、高校だよ? 大昔だし、互いに既婚者で、そんな気持ちはもうとっくに昇華してるよ。懐かしさとか、楽しさの方がドキドキより全然多いから!)

やましい気持ちなどない。そう言い聞かせて、髪の毛を何度も耳にかける。わたしの、緊張している時の癖だ。もう一度求人の張り紙画像を確かめた。

✳︎十時〜十六時 ランチタイムのホール、キッチン若干名
✳︎十七時〜二十二時 ディナータイム ホール 若干名
 時給千円〜 曜日時間応相談

(上月くんはオーナーだし、あそこ以外にもお店持っていたし、すごく忙しそうだし、もし働いても、会う機会はほとんどないんじゃないかな)

とはいえ、もし働けるのなら、の話だ。このオシャレなお店に、今のところ求職活動全敗中の三十五歳アラフォー主婦の需要はあるのだろうか。

携帯をぎゅっと握りしめ、目を強く閉じる。

ー動き出さないと、なにも変わらないー

何かの小説か雑誌かで読んだその言葉を心の中で呟いて、わたしは思い切って記されている番号に電話をかけた。

『お電話ありがとうございます。レストランカフェ、Blueでございます』
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