フラれた後輩くんに、結婚してから再会しました
上月くんの車は最上級のレクサスで、中は高級感のあるレザー張りだ。これはオーナー業用の車らしく、他にもプライベートで好きな車に乗っているそうだ。
「仕事で使うからやっぱり、ある程度いいのに乗っておかないといけないんですよ」
そういう彼はちゃんとビジネスマンの顔をしていた。
さすが、お店をいくつか持っている若手社長だけある。わたしには想像できない世界にいるのだ、としみじみ感心してしまった。
マンションまでの道のり、彼はハンドルを握り、無言で運転している。
わたしはそっと彼の様子を窺った。
(相変わらず、かっこいいな……)
切長の瞳は長いまつ毛に覆われて、どこか物憂げに前を見つめている。どこまでも真っ直ぐ通った鼻すじ。シャープな顎のラインに少し薄めのくちびる。少し突き出た喉仏。男らしいその凜とした顔立ちについ、見惚れてしまっていた。
「それで? なんでまたウチの店で面接を?」
突然彼が口を開いたので、わたしはひゃっと飛び上がってしまった。見ると、形のいい唇がすこしへの字になっている。