フラれた後輩くんに、結婚してから再会しました
「ライブ……? レストランで、ですか」
どういうことだろう。
「そう。レストランのオーナーがバンド好きで、たまに自分のお店にプロのバンドを呼ぶのよ。とっても素敵なの」
わたしは思わずロックバンドを想像してしまったが、どうやらトランペットやサックスなどのジャズバンドらしい。客は食事とお酒を楽しみながら、バンドの生演奏を楽しむというスタイルなのだそうだ。
「ここみたいなレトロモダンなレストランで、食事と音楽、最高なのよ。チケットも完売しちゃうの。そんなに広くないのがまた、いいのよー」
吉野さんはうっとりしたようにため息をつく。
「毎日主婦も育児もがんばってると、終わりのない道走ってるみたいじゃない? 褒めてくれるのは母の日だけよ」
そんな時に知ったのがその店で、生演奏にすっかり魅せられてしまったそうだ。
「バンド……。いいですね。素敵。わたし、じつはブラスバンドやってたんです」
部活の記憶が一気に蘇る。わたしはフルートだったけど、本当はサックスがやりたかったのだ。あの金色に輝く流線形がとてつもなくかっこよかったから。
「え? そうなの? じゃあぜひぜひ、行ってほしいわ! ほんとに楽しいのよ」