旅先恋愛~一夜の秘め事~
1.道案内の王子様
「――お前の全部を俺にくれないか」


甘く優しい声に背筋に痺れがはしる。


「お前はただ俺に愛されていればいい」


真っ直ぐ私を射抜く、妖艶な眼差しから逃れられない。

骨ばった長い指が私の顎を掬う。


「やっと、見つけたんだ。もう絶対に逃がさない」


頬に触れる吐息に心が震えた。


「お前を妻にする」


見惚れるほど整った面差しが至近距離に迫る。

強引なプロポーズの返事は、重なった唇に吞みこまれた。
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