旅先恋愛~一夜の秘め事~
「――元々ふたりの仲を反対するつもりはなかったけど、入籍って急すぎでしょ。私の知らないうちに、なんでそんな急展開になるわけ?」
ペットボトルの水を口にしながらハトコが尋ねる。
「しかも妊娠って……二重でおめでたい話だけど目まぐるしすぎ。引っ越しもあるし聞いているだけで疲れるわ。体調は大丈夫なの?」
「今は平気よ、ありがとう。私もまったく現実感がなくて、たまにこれは夢かと思う」
大きめの段ボールにバッグを詰めていると、麗が肩を竦める。
「この急な引っ越しも副社長たっての希望なんでしょ?」
「うん、離れて暮らすのは心配だからって」
「椿森副社長ってそんなに過保護だったっけ? 恋をすれば人は変わるのかしら」
麗には先ほど、これまでのいきさつを話した。
婚姻届を記入後、早々に自身の自宅に引っ越すように暁さんに告げられた。
驚くことにあの高級マンションは賃貸ではなく、彼の持ち物だという。
ほかにも幾つか物件を所有しているらしい。
『気に入らないなら引っ越すし、ほかの物件を購入しても構わない』とあっさり言われ、お金持ちの考えはよくわからないと頭が痛くなった。
価値観の違いを、ともに暮らす中で埋められるのだろうか。
私の自宅マンションは更新したばかりだし、仕事や体調と相談しつつ引っ越すつもりだったのに、暁さんは頑として譲らなかった。
ペットボトルの水を口にしながらハトコが尋ねる。
「しかも妊娠って……二重でおめでたい話だけど目まぐるしすぎ。引っ越しもあるし聞いているだけで疲れるわ。体調は大丈夫なの?」
「今は平気よ、ありがとう。私もまったく現実感がなくて、たまにこれは夢かと思う」
大きめの段ボールにバッグを詰めていると、麗が肩を竦める。
「この急な引っ越しも副社長たっての希望なんでしょ?」
「うん、離れて暮らすのは心配だからって」
「椿森副社長ってそんなに過保護だったっけ? 恋をすれば人は変わるのかしら」
麗には先ほど、これまでのいきさつを話した。
婚姻届を記入後、早々に自身の自宅に引っ越すように暁さんに告げられた。
驚くことにあの高級マンションは賃貸ではなく、彼の持ち物だという。
ほかにも幾つか物件を所有しているらしい。
『気に入らないなら引っ越すし、ほかの物件を購入しても構わない』とあっさり言われ、お金持ちの考えはよくわからないと頭が痛くなった。
価値観の違いを、ともに暮らす中で埋められるのだろうか。
私の自宅マンションは更新したばかりだし、仕事や体調と相談しつつ引っ越すつもりだったのに、暁さんは頑として譲らなかった。